日経グッデイ

働くオンナの保健室

たまって苦しいお腹のガス、原因は空気の飲み込みやストレス、冷え

すぐに役立つ「ガス抜き対策法」も紹介

たまって苦しい、でも人前では出せないし…。多くの女性が抱えるお腹のガスの悩みには、空気の飲み込みやストレス、冷え、食事などが関係している。簡単にできるセルフケア、薬による治療など、すぐに役立つ 「ガス抜き対策法」を紹介します。

【原因】たまりやすいのは「ストレスなどで空気を飲み込む」「冷えて胃腸が弱い」人

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 お腹が張る、ゴロゴロ鳴る、人前でおならが出てしまいそう…。多くの女性を悩ませるお腹のガス。そもそもガスはなぜたまるのか。

 「ガスのほとんどは口から飲み込んだ空気。私たちは飲食を通して気づかないうちに多くの空気を飲み込んでいる。例えば10mLの水を飲むと、その倍近い約18mLの空気が胃に入るという報告もある」と広島大学病院感染症科の大毛宏喜教授。

 胃に入った空気の一部はゲップとして外に出るが、残ったものは下降して腸のガスになる。「飲み込んだ空気の約8割は窒素。これは酸素などと違って体内で消えてなくならないため、腸内ガスになって、おならとして外へ出る」(大毛教授)。つまり、飲み込む空気の量が多いほど、げっぷやお腹にたまるガスも増える。これが「呑気症(どんきしょう)」と呼ばれる症状だ。


お腹にたまったたくさんのガス
便秘の人の腹部レントゲン写真。黒く抜けているのがガス。便とガスが大腸内にたくさんたまっている。(画像提供/広島大学病院内視鏡診療科・上野義隆診療講師)
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 どんな人が空気を飲み込みやすいのか。早食いなどでも飲み込む量は増えるが、東北大学病院心療内科の福土審教授は、「不安が強く、ストレスを感じやすい人は、無意識のうちにたくさんの空気を飲み込む傾向がある。このような人の中には、便秘や下痢を繰り返す『過敏性腸症候群(IBS)』の人も少なくない」と話す。

ストレスで腹痛やガス…過敏性腸症候群かも
 急に腹痛に襲われたり、下痢や便秘を繰り返したり…。こんな症状に悩む人は過敏性腸症候群(IBS)かも。「ストレスや胃腸炎の感染をきっかけに発症することが多い。腸自体が敏感になっているので、ちょっとしたストレスでも腹痛や便通異常が起こる。ガスがたまって苦しいと訴える人も少なくない」と福土教授。突然、お腹が痛くなったりするので、通勤電車に乗るのが苦痛になるなど、生活にも支障をきたす。精神的にも不安や抑うつが強くなりやすい。つらい症状が続く場合は我慢せず、心療内科などで受診を。

 冷え症で胃腸が弱い人もガスが増えやすいという。「お腹が冷えて腸がスムーズに動かないため、ガスがたまりやすくなる」と漢方に詳しい吉祥寺東方医院顧問の三浦於菟医師。通常、腸はかなりの速さで動いているが、それを意識することはない。ところが、冷えのために蠕動(ぜんどう)運動がゆっくりになると、逆に腸の動きを自覚することがあるという。「お腹の張りと一緒に『腸がモコモコ動く』などと訴える患者さんも少なくない」(三浦医師)。

 一方、便秘のときなどは腸内に滞留した便からガスが発生する。また、ちょっと意外だが、便秘にいいはずの食物繊維がガスの原因になることも。「食物繊維の種類によっては人に合う、合わないがあり、なかには腸内発酵が盛んになりすぎてガスが増えることもある」と大毛教授。

 なお、腸内ガスの成分の99%は無臭だという。「呑気症の人に多い窒素は無臭。におうのは残りの1%で、腸内細菌による発酵の結果、発生する。代表的なのは硫化水素やインドールなどで、これらが多いかどうかでおならのにおいが決まる」(大毛教授)。

 このほか、長時間座ったままだったり、体を締め付ける衣類を着ていたりすると、腸を圧迫してガスがたまることに。さて、あなたのガスの原因は? 下図でチェックしてみて。

図1◎ お腹にガスがたまる原因のチェックリスト
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【セルフケア】
お腹のガスは「入れない」「作らない」「出す」で解決!

 毎日の生活ですぐに始められるお腹のガス対策は、大きく3つ。ガスを「入れない」「作らない」「出す」ことだ。

ガスを我慢しすぎると、腸に“へこみ”ができることも
写真は大腸の中。丸く凹んでいるのが大腸憩室。食物繊維の摂取量が少なく、便秘ぎみの人にできやすい。ガスで腸が膨らんだときに腸壁の弱い部分が凹むと考えられる。まれではあるが最悪の場合、腸壁に穴が開くこともあるので侮れない。(画像提供:大毛教授)
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 第1は空気を「入れない」こと。早食いやがぶ飲みをすると、空気を多く飲み込むので、飲食はゆっくりを心がけて。また、胃の中の空気を出すと、腸のガスも減る。「ゲップを我慢しないことが重要。食後すぐに横になると、ゲップが出にくくなるので注意」と大毛教授。なお、ゲップやガスがたまるからと炭酸飲料を控える人がいるが、二酸化炭素は体内で吸収されるので、腸内にたまることはないという。

 ストレスがあると空気を飲み込みやすくなるので、心のケアも大切。「腹式呼吸をしたり、瞑想したりして不安を静める。1日1回、そういう時間を持つだけでだいぶ違う」と福土教授。

 第2はガスを「作らない」こと。大腸内に滞留する便はガスの発生源になるので、便秘をしないよう気をつけて。便の滞留が長いほど有害ガスも発生しやすい。そのためにも食物繊維は積極的にとりたいが、ポイントは自分の腸に合ったものを選ぶことだ。「腸内細菌叢(さいきんそう)は人によって違うので、いろいろな食物繊維を試し、便やガスの状態を見ながら相性のいいものを見つけるといい」と大毛教授。善玉菌も腸内環境を整えてくれる。「IBSによる腹部膨満感が、ビフィズス菌の摂取で改善したという報告もある」(福土教授)。

 第3はガスを「出す」こと。人前では出しにくいが、自宅やトイレではしっかり出すといい。「我慢するとお腹が張って腸の動きが悪くなる。すると便が停滞して、ますますガスがたまる」と大毛教授。我慢したガスで腸壁にへこみができる「大腸憩室(けいしつ)」を招く可能性もあるというから、我慢は禁物だ。うまく出せない場合は、ヨガも効果的。すんなり出せる“ガス出しヨガ”もやってみて!

ヨガでたまったガスを出す
 ヨガ指導者の柳瀬けい子さんが、“ガス出しヨガ”として教えてくれたのが、次の2つのポーズ。「お腹をグーッと伸ばしたり、縮めたりすることで、腸が内側から動き出す。お腹が張って苦しいときはもちろん、毎日続けていると便通もよくなる」と柳瀬さん。お試しを。

弓のポーズ

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  1. うつぶせになって、手足を伸ばし、リラックス。あご、おへそ、恥骨、足先が一直線になる意識で。
  2. 両手で両足を外側から持つ。あごは床につけたままにして、鼻から息を吐く。
  3. 鼻から息を吸いながら、足を引き上げ、大きく反る。お腹で体を支える意識で。この状態で10呼吸キープ。
  4. 息を吐きながら元に戻り、顔を横に向けてゆったり呼吸を。お腹をグーッと伸ばして呼吸するので腸が十分刺激される。

赤ちゃんのポーズ

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  1. あおむけになり全身の力を抜いた後、両ひざを立てる。
  2. 大きく息を吸って、両手で右ひざを抱える。息を吐きながら顔と右ひざをできるだけ近づけ、お腹をグーッと縮める。
  3. そのままの状態で、左脚を静かに伸ばす。10呼吸キープしたら、静かに手足をほどく。お腹の力を抜き、元の姿勢でリラックス。このポーズでは、お腹を思い切り縮めて腸を刺激する。
  4. 反対側の脚も同様に。両ひざを抱えて、お腹を縮めるポーズを加えてもいい。

【メディカルケア】つらい人には漢方薬や抗不安薬も有効

 セルフケアを試しても、まだつらい人は我慢せず、治療を受けよう。「お腹のガスは漢方が得意とする症状。タイプに合わせ、主に4つの漢方薬がよく用いられる。いずれも胃腸の弱い人に向く」と三浦医師。

 下痢が多く、冷え傾向があってガスがたまる人には、「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」が効果的。同じく冷え傾向はあるが、便秘がちでお腹が張る人には「桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)」を。また冷えが強く、腸が張ってモコモコ動くように感じる人には「大建中湯(だいけんちゅうとう)」が効く。「冷えたお腹を温めて、腸の動きをよくしてくれる」と三浦医師。ベースに冷えがある人は、漢方をのむと同時に、おへそのあたりを温めたり、マッサージしたりするのもお薦めという。

 食後に胃がもたれて、お腹が張る人に向くのは「平胃散(へいいさん)」だ。「腸の膨満と勘違いしている人がいるが、食後のお腹の張りは胃が下がるために起こる。胃の消化不良が原因」と三浦医師。

“ガス腹”に効く主な漢方薬
  • 下痢や腹痛がある人に「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」

     比較的体力が低下して、腹部膨満感や腹痛、下痢がある人に。下痢は“しぶり腹”のことが多く、何度も便意を催すが、排便量は多くない。便秘が軽度の場合に用いることも。

  • 頑固な便秘や腹痛のある人に「桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)」

     桂枝加芍薬湯に下剤効果のある大黄を加えたもの。比較的体力が低下して、腹部膨満感や腸内の停滞感、腹痛、常習的な便秘のある人に向いている。

  • お腹が冷えて腸の動きが低下した人に「大建中湯(だいけんちゅうとう)」

     体力が低下してお腹や手足が冷え、痛みや腹部の膨満感、腸が動く感じのある人に適する。体を温めることで、冷えによって低下した腸の動きを改善させる。

  • 食後、胃もたれがある人に「平胃散(へいいさん)」

     漢方の代表的な胃腸薬。体力中程度で、胃がもたれて消化不良の人、特に食後の胃もたれと腹部膨満感の強い人に向く。胃の働きをよくして、消化を改善する。

 一方、空気を多く飲み込んだり、IBSで腹痛や便通異常を繰り返したりする場合は、ストレス対処が重要。「不安感が強い人には呼吸法などの指導に加え、抗不安薬を処方することも」と福土教授。最近は依存性の心配が少ない「タンドスピロン」(商品名セディールなど)という、神経に作用するセロトニン系の薬を用いることが多いそう。また不安になることを避けるのではなく、あえてそれにさらされることで積極的に状況に慣れていく「曝露(ばくろ)療法」という精神療法も効果的だという。

腸はストレスを感じやすい臓器
腸と脳は密接にかかわっている
ストレスを受けると脳からCRHが放出され、腸が過敏になる。同時に腸壁でもアレルギー反応に似た現象が起こり、腸がますます過敏になるという。“第二の脳”とも呼ばれる腸は、ストレスの影響をまともに受ける。
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 ストレスがあるとお腹が痛くなる、お腹が敏感だと不安感も増す…。脳と腸の関係は非常に密接だ。「例えばIBSでは、ストレスが引き金になって腹痛や便通異常が発症したり、悪化したりする。つまり、腸の症状であると同時に、ストレス関連病でもある。まさに脳腸相関の病気」と福土教授は話す。

 右図はその関係を簡単に示したもの。ストレスを感じると脳からCRHというホルモンが放出され、神経を介して腸に作用。すると腸の動きが過敏になり、腹痛や便通異常が起こりやすくなる。そして、その情報は情動を司る脳の扁桃体などに伝わり、不安や抑うつを生む…。「腸はとても感じやすい臓器。その“内臓感覚”が脳に伝わって、不安などの情動が生じる。実際、IBSでは不安障害やうつ病の発症率が高いこともわかっている」(福土教授)。

ガスをためない 生活スタイル8カ条
  1. 早食い、がぶ飲みは禁物

    よくかんで、ゆっくり食べると、飲み込む空気の量が減って、ガスも減る。

  2. ゲップ、おならは我慢しない

    我慢したゲップは腸のガスになる。おならの我慢はさらなるガスを招く。

  3. 食後すぐに横にならない

    横になると、胃袋の中の食べ物が胃の入り口をふさぎ、ゲップが出にくくなる。

  4. 便秘をしないようにする

    たまった便はガスの発生源。たまる時間が長くなるほどガスも増え、悪臭の原因にも。

  5. 自分に合った食物繊維をとる

    特定の食品の食物繊維でガスが増える人がいる。相性のいい食物繊維を見つけよう。

  6. ビフィズス菌などの善玉菌をとる

    悪玉菌が増えると有害ガスも多くなる。善玉菌で腸内環境をよい状態に。

  7. 毎日、腹式呼吸や瞑想をする時間を持つ

    不安な心を落ち着かせる時間を。お腹からゆっくり息を吐く腹式呼吸や瞑想がお薦め。

  8. 休息を取り、ストレスをためない

    ストレスをためない、胃腸を休ませるためにも、よく寝ることが一番!

(取材・文:佐田節子/イラスト:いいあい、三弓素青)

(出典:日経ヘルス2015年2月号/記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)