まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

かゆみという感覚はやっかいだ。ついつい掻いてしまうと、余計にかゆくなる不思議な感覚だ。かゆみに関する著書がある菊池皮膚科医院(東京都荒川区)の菊池新院長は、「皮膚には、かゆみを伝える神経がある。痛みの神経と大きく異なるのは、掻くと快感を生じること」と話す。「fMRI(機能的磁気共鳴画像法)」という装置で掻いたときの脳の血流の変化を調べたところ、大脳の「報酬系」という部分が強く反応することが分かった。つまり、掻くことは自分へのご褒美であると脳が感じているため、ついついまた掻きたくなってしまう。掻くことによって、さらにかゆくなる悪循環に陥ってしまうわけだ。
オヤジたちに冬のかゆみをもたらしている一番の原因は皮膚の乾燥だ。皮膚は乾燥すると表面のバリア機能が低下するため、かゆみを伝える神経も刺激を受けやすくなる。こうした「かゆみ過敏状態」によって、かゆみの悪循環に陥りやすくなる。ここでいうバリア機能とは、体外に分泌される皮脂などの“天然”保湿成分が適度に皮膚の潤いを保ち、乾燥を防ぐことを指す。
皮膚が乾燥する理由について菊池院長は、「周囲の湿度が低いことも一因だが、それと同時に気温も影響する。気温が下がると皮膚の毛細血管は収縮し、汗や皮脂などの分泌が少なくなることの影響も大きい」と話す。また、オフィスでエアコンを使う環境にいたり、家でファンヒーターの温風に直接当たったりすることも、皮膚の乾燥を招く。特に乾燥しやすいのは、もともと皮脂の分泌が少ない足のスネと腰回りなのだ。
環境の変化で皮膚が乾燥するのは女性も同じはずだが、女性でポリポリしている人が少ないのはなぜだろう。菊池院長は「もちろん女性は人目を気にして掻かないよう心がけているようですが、普段から女性の方が男性より肌をいたわっています。体を手などで優しく洗う人が多く、日ごろから全身のスキンケアもしている」と話す。つまり、オヤジの「かゆい」は、普段から自分の体を粗末にしているツケともいえるのだ。