日経グッデイ

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室

好感度・存在感も倍増?! 3週間でできる“猫背”解消テクニック

「肩ねじり」「バルーンストレッチ」など簡単エクササイズで解決

 荒川直樹=科学ライター

まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

事務機器メーカーに勤める38歳。背も175センチはあるし、顔だってそこそこ…。営業成績は常にトップ5に名を連ねるなど、努力だってしている。それなのに、なぜか目立たないオレ。部長に呼ばれるときは、いつも「そこの君」。出張のお土産をオフィスの女子に渡すと「出張行ってたの。気づかなかったぁ」だ。取引先が「やあっ」って最初に声をかけるのは、後輩だったりする。最近、その理由が分かりかけてきた。見るに見かねた妻に「男なんだから、胸はって堂々としてよ」と言われたのだ。つまり猫背で肩をすぼめているのが、地味~なオレの原因なのか。どうしたらいい姿勢を保つようにできるのだろう。
(イラスト:川崎タカオ)

 人の外観のイメージに姿勢は深く関わっている。背筋がピンと伸び、胸を張って歩いている人は、外向的でポジティブ。肩が落ち、背中を丸めている猫背の人は、内向的なイメージを持たれがちだ。

 自分は大丈夫と過信してはいけない。姿勢は年齢とともに変化する。仲野整體東京青山の仲野孝明院長は、「若いうちは良い姿勢を保っていても、仕事勤めなどで運動不足が続くと猫背になってくることが多い」と話す。

 しかも、その変化に自分は気づきにくい。身近な人に言われたり、スーツを仕立てるときに指摘されたりして初めて気づくという。仲野院長は「姿勢の矯正は、年を取るほど時間がかかる」と話す。いつまでもビシッとした男でいるためにも、若いうちから姿勢改善に取り組みたいものだ。

猫背は生活習慣の積み重ねで起こる

 猫背は生活習慣の積み重ねで起こる。仲野院長は「現代のオフィスワーカーにとって、1日のうちで最も長く過ごす時間は椅子の上。そのときに姿勢が悪化することが多い」と話す。人間は、立って歩き回るときは、自然と背筋が伸びて背骨がS字状にカーブした正しい姿勢になる。そうでないと体が上手く使えないからだ。

 それなのに、オフィスの椅子に座ったときは、パソコンの画面をのぞくために、頭が前に垂れ、キーボードを操作するために、肩がすぼめられて腕が前に出る。さらに骨盤の座骨が後ろ側に倒れて、背骨が丸くなる。典型的な猫背の姿勢といっていいだろう。

 最初は、座っているときだけの一時的な変化だが、やがて立って歩くときにも肩がすぼめられて、背中が曲がった「ゾンビ」のような歩き方になる。こうした状態になると、イメージが悪いだけではなく、上手な体の使い方ができず、「体が重い」「運動が下手になった」「ケガをしやすくなった」といった症状を示すようになる。また「頑固な肩こり」「背中や腰の痛み」といった関節の痛みだけでなく、「疲れやすい」「血圧が下がりにくい」「夜によく眠れない」といった全身症状も出てくるから要注意だ。

猫背の改善はオフィスでの習慣から

 では猫背による姿勢悪化を食い止めるにはどうしたらいいのか。仲野院長が勧めるのはオフィスでの座る姿勢の改善だ。悪い習慣を一つずつ改善すれば、姿勢も変わってくるという。方法は2つある。

 1つめは、“姿勢を意識しない”でできる「環境の改善」だ。これは「正しいパソコン利用環境」として知られているものと同じ。座ってキーボードを打つ作業をしたとき、腕の曲がる角度が直角になるように、椅子の高さとキーボードの位置を調整する。さらに視線が下がらないように、ディスプレイの位置を高めに調整する。仲野院長は、「ディスプレイの位置は低すぎる人が多く、キーボードの位置は遠すぎる人が多い」と話す。

 2つめは、自分で“意識して”行う「姿勢の改善」だ。まず椅子に深く座るか、背もたれにクッションを挟む。そして、座骨を立てるようにまっすぐ座る。よく「腰を立てる」という表現をするが、そのときも座骨は立っている。

 さらに、おへその下に力を入れながら、頭が上から糸で吊されるような感覚で上半身を伸ばす。仲野院長は「耳後方にある骨のでっぱりを触ってみて、そこを上部に持ち上げるような感覚でもいい」と話す。こうすることで体の負担の少ない正しい姿勢を身につけられる。

背筋を伸ばす座り方
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座面が広い椅子に座るときは、クッションを背もたれとの間にはさんで、座骨と背もたれの間にすき間ができないようにする。膝は直角になるように座る。椅子が高すぎる場合は、足置きなどで調節する。

 また、パソコン作業中は体の動きが少なく、体が固まってしまいがち。下図に示した「肩ねじり」や「バルーンストレッチ」などの体操を行うといいだろう。

パソコン作業で固まった体をほぐすエクササイズ
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「肩ねじり」は、片方の手のひらを上に向け、もう片方は下に向ける。それぞれ逆になるように腕を回し、リズミカルに1分ほど繰り返す。「バルーンストレッチ」は、親指を後ろ側に向けた状態で真っ直ぐに伸ばした両腕を、肩甲骨を寄せながら後ろへ回す。

3週間で「猫背習慣」を「猫背解消習慣」へ

 とはいえ、こうした姿勢改善やストレッチの実施を、仕事中にずっと意識し続けるのは大変だ。仕事に追われて集中しているときには当然忘れてしまう。仲野院長も「忘れて当たり前」という。

 仲野院長が患者などに勧めているのは、スマートフォンのアプリなどによる「リマインド機能」を用いて、1時間に1度知らせてもらうこと。そのときに可能であれば姿勢チェックや体操を行えばいい。そして、「それを3週間続けると、自然と正しい姿勢が身についていく」と話す。実際、多くの患者さんが姿勢の改善とともに、肩こりの解消などを実感しているという。

 また、この「猫背解消習慣」は、猫背で困っている人だけでなく、運動不足などで体調に不安を感じている人にも効果があるという。「人間の体は、立って動き回るようにできていて、本来、長時間座るようにはできていない」(仲野院長)のだ。それと現実の行動とのギャップが、やがて変形性関節症や骨粗鬆症などのロコモティブシンドローム(運動器症候群)をもたらす原因となっている可能性もある。

 仲野院長は「小学校の授業には必ず体育の時間があるように、大人も座ったら立って運動する時間が必要です。週1回は本格的に体を動かす日を設けるなど、人間本来のバランスに近づけるような生活を心がけてほしい」と話す。

仲野孝明(なかの たかあき)さん
仲野整體東京青山 院長、姿勢治療家
仲野孝明(なかの たかあき)さん 1973年三重県生まれ。大正15年に創業し、二度の藍綬褒章を受章した仲野整體の4代目に生まれ、自身もこれまで15万人以上の患者を治療する。柔道整復師認定スポーツトレーナー。介護予防運動指導員。姿勢関連の著書に、『9割の体調不良は姿勢でよくなる』(KADOKAWA/中経出版)、『長く健康でいたければ、「背伸び」をしなさい』(サンマーク出版)がある。ホームページはこちら