日経グッデイ

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室

夜の度重なるオシッコで寝不足、仕事効率はダウン

50代の過半数が悩む夜間頻尿の解決法とは?

 荒川直樹=科学ライター

まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

 建設会社勤務の53歳。昼間はバンバン働き、酒はガンガン飲み、夜はコンコン(昏々)と眠るのがオレの流儀…だった。しかし、50歳を過ぎる頃から夜のオシッコで起きるようになった。今ではひと晩に2回、3回のときもある。さすがに朝の5時頃に起きると「寝直し」できない。睡眠不足が続いて、昼間に部下の前であくびをかいてしまったこともある。また、妻も一緒に目覚めてしまい、うっとうしく感じているらしい。最近「熟年離婚って、日常のつまらないことが原因なんだってよー」なんて嫌みを言い出した。オレだって好きで夜中にオシッコしてるわけじゃないぞ。でも、少なくとも夜1回にする方法はないだろうか。
(イラスト:川崎タカオ)

 夜、オシッコで1回以上起きてしまう夜間頻尿は、実は多くの中高年が訴えるお悩みだ。日本で夜間頻尿の人がどれぐらいいるかを年齢・性別ごとに調査したところ、50代の男女では60%以上の人が夜1回以上トイレに起きていることが分かった。

50代以降の過半数の人に夜間頻尿がみられる
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年齢別、性別に夜間の排尿回数を調べた。(日本排尿機能会誌 14(2):266、2003)

 日本大学板橋病院泌尿器科の高橋悟主任教授は「夜間頻尿は加齢現象の一つ。しかし、夜起きる回数が2回、3回と増えると睡眠が質・量ともに悪化し、昼間の眠気などを訴えるようになるほか、夜間頻尿自体に強いストレスを感じるようになる」と話す。

夜間頻尿の原因は「膀胱容量の減少」「夜間多尿」「睡眠障害」

 夜間頻尿の原因は、「膀胱容量の減少」(膀胱に少ししか尿がたまってなくても尿意を感じる)、「夜間多尿」(さまざまな原因で夜間に作られる尿の量が増える)、「睡眠障害」(睡眠が浅くなったときに尿意を感じる)に分けられる。頻尿の症状が夜間だけであるなら夜間多尿であるケースが多く、その場合は生活改善によって症状が治まることがある。一方、昼も夜も頻尿の症状があるなら、前立腺肥大や過活動膀胱など泌尿器科の病気が疑われるため、医療機関で受診するべきだ。

 また、睡眠障害による場合は夜間の尿量は正常だが、眠りが浅いために就寝中に尿意を感じてしまう。この場合も、規則正しく起床するなどの生活改善によって、症状が治まることがある。

「昼も頻尿」なら泌尿器科の病気が隠れている可能性

 夜間頻尿を起こす1つ目の原因に当たる「膀胱容量の減少」とは、膀胱にオシッコを溜められる量が低下し、夜でも排尿したくなってしまう症状だ。加齢による膀胱の萎縮が原因で起こる現象だが、過活動膀胱、前立腺肥大症といった泌尿器科の病気が影響していることもある。例えば、前者は男女もとに多くみられる病気で、膀胱に尿が少量しか溜まっていないのに、膀胱が勝手に収縮して尿意をもたらす病気である。一方、後者は、前立腺肥大症が発症しやすくなる50代以降の男性に多く見られる。前立腺肥大症になるとオシッコが出にくくなるが、その前兆として頻尿をもたらすことがある。

 高橋主任教授は「チェックして欲しいのは、症状が夜間頻尿だけなのか、もしかしたら昼も夜も頻尿(昼夜頻尿)なのではないかということだ」と話す。例えば、人間の膀胱は少なくとも300mlの尿を溜めることができる。腎臓が尿を作り出すペースを考えれば、水などを飲んでいても3~4時間はオシッコにいかなくても済むはず。「昼夜頻尿になると、2時間程度の会議、映画、打ち合わせの時間もオシッコが我慢できないことが多い」(高橋主任教授)と話す。その場合は、泌尿器科の病気を疑って、医療機関を受診するべきだ。

 なお、ビールなどアルコールには利尿作用があるので、宴会中何度もトイレにいくのは問題がないことが多い。

夜間の尿量が500ml以上だと「夜間多尿」

 若い人は一度眠ったら朝までなかなか起きないものだが、それでも膀胱がパンパンにならないのは、ヒトの体には眠っている間に作る尿の量を制限する抗利尿ホルモンが分泌されるからだ。高橋主任教授は「夜間、水を飲まないのに尿を作っていたら脱水状態になってしまう。それを予防するための体のメカニズムなのだが、加齢とともに機能が低下し、他の原因も加わって夜間の尿量が増えやすくなる」と話す。これが夜間多尿だ。

 専門的な診断では、夜寝てから起床直後までにするオシッコの量が、1日総尿量の3分の1を超えているときに「夜間多尿」と判断される。平均的な1日総尿量は1500mlなので、夜間に500ml以上のオシッコを出していると夜間多尿ということになる。

 自分が夜間多尿かどうかを知るには、泌尿器科での診療でも使われる下図の排尿日誌が有効だ。ペットボトルの上部を切り落として、50mlごとの目盛りをつけ、そこにオシッコを入れて夜間の尿量だけでも記録するといい。

排尿日誌で尿量に異常がないかをチェック
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夜間多尿の場合は運動、食事を改善

 先に紹介したチェック法によって、自分が「夜間多尿」であることが分かったら、夜作られるオシッコの量を適度にするよう生活改善を行おう。まずは夜の水分の取り過ぎも夜間多尿の原因だ。健康のために水を飲んでいるという人も多いが、夜間頻尿で困るようなら就寝前の水分摂取を控えめにしたい。高橋主任教授は「夜、飲み物が欲しくなる人は、塩分の取り過ぎであることも多い。塩分を控えめにすることで適度な水分摂取量にして欲しい」と話す。

 加えて、運動の機会を増やすことが有効なケースもある。中高年になると血管の機能が低下し、水分が下半身に溜まりやすくなる。典型的な例が、午後から夕方にかけてみられる「脚のむくみ」だ。この下半身に溜まった水分が就寝時に体の中心部に戻ってくるため、夜間に腎臓で作られるオシッコの量が増加してしまうのだ。高橋主任教授は「ウォーキングなど毎日、少しずつでも運動の機会を持ち、下半身のむくみを改善することも夜間頻尿の改善につながる」と話す。

 このほか、夜間多尿が特定の基礎疾患によってもたらされるケースもある。糖尿病になると1日を通じて尿量が増え、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、心臓や腎臓の病気の一部ではとくに夜間の尿量が増えることが知られている。肥満を防ぎメタボリックシンドロームの予防対策を行ったり、血圧を管理したりするなど、夜間頻尿の傾向が見られるならば、まずは生活習慣を見直して欲しい。

浅い眠りも夜間頻尿の原因に

 夜間頻尿の3つ目の原因は「睡眠障害」だ。排尿日誌では夜間の尿量が正常で、しかも泌尿器科の病気もないのに、夜何回もオシッコのために起きてしまう場合もある。そうしたケースでは中途覚醒、早朝覚醒などの睡眠障害が潜んでいることもある。高橋主任教授は「睡眠障害で眠りが浅いと軽い尿意でも覚醒してしまいますし、逆に目が覚めたことでトイレに行きたくなるケースもあります」と話す。

 こうした場合は、「毎日規則正しく起床」「朝から昼にかけて日の光を浴びる」「午後に軽く運動をする」といった睡眠の質を高める生活を行うこと、必要に応じて睡眠外来など睡眠障害に詳しい医師に相談するといいだろう。

 さて、中高年なら誰でも体験する「夜のオシッコ問題」についてまとめてみたが、最後に高橋主任教授が推奨する夜間頻尿を改善する生活サイクルを紹介する。就寝の3時間前に飲食をすませ、しかも入浴によって下半身のむくみを改善することで、体に入った余分な水分を就寝前のオシッコで排出することができるほか、睡眠の質も改善できるというものだ。

夜間頻尿を改善する生活
(1)夕食、飲酒は就寝3時間前までにすませる
(2)食後ゆっくりと入浴する
(3)就寝前はできるだけ静かに過ごす
(4)オシッコを済ませて床に入る

 ここまで取り上げた生活改善を行っても夜間頻尿が治まらないようであれば、何かしらの病気が原因となっている可能性があるので、泌尿器科や睡眠外来を受診するとよいだろう。

高橋 悟(たかはし さとる)さん
日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授
高橋 悟(たかはし さとる)さん 1985年、群馬大学医学部を卒業。東京大学医学部附属病院、米メイヨークリニックなどの勤務、東京大学医学部助教授を経て、2005年より現職。2003年には、天皇陛下の「前立腺がん」の手術を担当する医療チームに加わった。排尿関連のトラブルでは、日中や睡眠中に突然の強い尿意におそわれる「過活動膀胱」や、排尿障害を引き起こす「前立腺肥大症」などの治療を多く手がけている。