日経グッデイ

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室

いつ受診すべき? 悩ましきED治療デビュー

まだ大丈夫! でも不安。なにより男のプライドが…

 荒川直樹=科学ライター

  妻によると「技術点」はいまひとつのようで、「元気」だけが自慢だった夜のオレ。ところが最近、持続力の低下が著しい。メールの着信音が鳴っただけでシュンとなることも。最新のED治療について相談したいが、看護師さんの前でパンツ脱ぐことになるかもと思うとためらってしまう。EDの診断で行われることを詳しく教えてほしい。かつてのパワーを取り戻し、「歳なんだから演技構成点で頑張れば」と見下す妻を見返したい。
(イラスト:川崎タカオ)

 年齢とともに「いつかは自然に訪れる」症状。それが「勃起力の低下」だ。ED改善薬を使った治療法があることは何となく知っているが、なかなか認めたくない。それが「オトコのプライド」に関わっているからだ。そして、「仕事が忙しく、ストレスがたまっているから」「最初はちゃんと硬くなるし、フィニッシュできる」「妻も淡白だから」「もう子供は2人いるし」などといって、問題を先送りしがちだ。

 それに対して順天堂大学医学部附属・順天堂医院泌尿器外科の堀江重郎教授は、「EDとは、陰茎を勃起させる海綿体へ血液を送り込む機能が低下した状態。いわば血管の病気」と話す。勃起に関わる血管は細いので、40代前半以降になると動脈硬化などのサインとして症状が現れ始める。性病のように、ちょっと後ろめたい気持ちを感じる必要もないし、若さの喪失を示すわけでもない。堀江教授は「医師のアドバイスと治療を受けることで、生活の質全体を高めることにもつながる」と話す。

 では、どんな状態の時に「もしかしたら自分もEDかも」と疑い、病院のドアを叩けばいいのだろうか。例えば、中高年になれば誰にでも生じるのが、セックスの最中に勃起度が低下してしまう「中折れ」が起こるものの、最終的には満足して終えることができるという状況。最初から最後までフルスロットルだった若い頃を考えると、なんだか寂しくなってしまうが、こんな程度でも相談に乗ってくれるのだろうか。

EDかどうかは「国際勃起機能スコア」などで診断

 結論からいえばOKだ。堀江教授は「勃起の持続など機能に基づく診断基準はあるが、最も重要なことは、本人およびパートナーの満足度といえる」と話す。一般に、日本人の夫婦は、子供がある程度成長してしまうと、セックスをマストと考えなくなる傾向がある。それに対して、西欧社会ではセックスが無いことは離婚の重要な原因となる。

 夫婦それぞれで温度差はあるが、いくつになってもセックスは夫婦の絆を強めるコミュニケーション手段。もし、勃起力の低下がもたらす不安によりセックスを楽しく感じられなかったり、夫婦のコミュニケーションを損ねているとしたら、気軽に専門家に相談してほしい。

 心配なのは、病院でどのような診察が行われるのかということ。しかし、いきなり外来の診療室でパンツを脱がされ「さあ勃起してみてください」なんて言われることはない。その代わりに行われるのがIIEF(国際勃起機能スコア)による診断。現在では、地域の診療所を含め多くの医療機関で採用している問診票だ。「勃起してそれを維持する自信はどの程度ありましたか」、「どれぐらいの頻度で性交に満足できましたか」など、5つの項目について5段階で評価。IIEFの満点は25点。21点以下で「EDが疑われる」とされる。

 筆者の知人で、40~50代の男性5人にやってみてもらったところ、「幸い」というか「残念ながら」というか、3人は21点以下となり、「うーん、懐の深いプログラムだ」とつぶやいた。なお、IIEFに基づく自己診断プログラムは、製薬企業などがWebサイトで公開している。「ED セルフチェック」「ED 診断基準」といったキーワードで検索すれば、すぐに試してみることができる。こっそりと調べてみてもらいたい。

 なお病院では、このIIEFに勃起の硬さ指標(EHS:下図)などを組み合わせて総合的に診断する。

「その硬さ」どのくらい? 勃起の硬さ指標(EHS)
EHSは米国で開発された自己診断指標。グレード1~3の状態なら専門家による治療での改善が見込まれる。

ED改善は全身の健康度アップに役立つ

 EDと診断されれば、「バイアグラ」「シアリス」「レビトラ」といったED改善薬による治療の対象となる。ただ堀江教授は、「ED問題を、中高年男性が自分の健康を見直す機会にもしてほしい」と話す。EDはいわば生活習慣病のサイン。検査してみると、肥満、血糖値上昇、高血圧、喫煙習慣などが放置されていることが多い。主治医と相談しながら生活改善に取り組むことで、EDが改善するケースも多くある。

 また最近知られるようになったLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)、いわゆる男性更年期障害のサインの1つとして、「セックスが楽しくない、性交の欲求が起きない」が挙げられている。放置しておくと「うつ病」と類似した精神症状を来すこともある。堀江教授は、「最近の研究では、ED治療薬が精巣機能を改善する可能性があることも明らかになっている」と話す。EDになっても恥ずかしがらず、早め早めに専門家に相談することが大切だ

(次回は、中高年男性を襲う下痢など胃腸関連のお悩みについて紹介する予定です)

堀江重郎(ほりえ しげお)さん
順天堂大学医学部附属・順天堂医院泌尿器外科 教授
堀江重郎(ほりえ しげお)さん 1985年、東京大学医学部を卒業。東大病院勤務後、米国テキサス州で医師免許取得。2003年に帝京大学医学部泌尿器科学・主任教授に就任。12年から順天堂大学医学部泌尿器外科学・教授。日本泌尿器科学会指導医。日本抗加齢医学会副理事長。一般向けの著書に『ヤル気がでる! 最強の男性医療』(文藝春秋)、『ササッとわかる男性機能の不安に答える本』(講談社)などがある。