日経グッデイ

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室

営業マンは歯が命。黄ばんだ歯を真っ白にしたい

自宅でジェルを塗布して数週間でホワイトニング 

 荒川直樹=科学ライター

まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

 今年の春、大手食品企業の営業マンに転職した40代。営業は爽やかなイメージが大切。鏡の前に立ったが、それまで事務職だったせいか、笑い方を忘れてしまったみたい…。思い切って二カッと笑ってみたもののなんだか冴えない。すると横から奥さんが「歯だね。若い子みたいに新鮮な白い歯じゃないとね」と笑った。「くそっ、賞味期限切れはお前の方だ!」と心のなかでつぶやくものの、確かに若い頃と比較して歯が黄色くなった気がする。ドラッグストアで「歯を白くするタイプの歯磨き」を買い込んで毎日ゴシゴシ磨いたけど、あまり効果を実感しなかった。最近では、なんだか歯が気になって顧客の前の笑顔もぎこちなくなってしまった。

(イラスト:川崎タカオ)

 人前で笑うとき、自分はどのような表情を作っているのだろう。生まれたばかりの我が子を前にして、口を左右に大きく広げ、歯をむきだしにして笑った、あの笑顔は遠い過去のものになった。最近では、口角を少し引き上げて「ニコッ」と微笑むぐらいかもしれない。

歯の色に自信がないと笑顔が控えめに

 これも「年相応」にといえば聞こえはいいが、原因は歯にあるのかもしれない。赤坂フォーラムデンタルクリニック(東京都港区)の坪田健嗣院長は「歯並びなどに異常はなくても、歯の色などに自信がないと、本人が気づかないうちに大きく歯を見せて笑う習慣もなくなっていくケースは意外に多い」と話す。

 前歯など特定の歯の変色の原因としては「虫歯による変色」「外傷によって歯髄(しずい)が壊死してしまった場合の変色」「金属の詰めものが原因の変色」などがあり、これは歯科医と相談のうえ、変色部を削りセラミックのクラウン(歯冠補綴物)を被せる方法などを選択できる。

 それに対してすべての歯が全体的に黄ばんでくる現象は、加齢とともに少しずつ進むため「しかたがない」とあきらめてしまうことが多い。しかし、坪田院長は「ホームホワイトニングという方法なら、歯全体の黄ばみをコントロールすることが可能。すでに20年ほどの臨床経験で有効性と安全性が認められています」と話す。

ホームホワイトニングを行う前
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ホームホワイトニングを行った後
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歯磨きしても歯の変色は取れない

 歯の色に不満を感じたとき、多くの人が挑戦するのがホワイトニング効果をうたった歯磨き剤を使うことだ。薬用ハイドロキシアパタイトという成分を含んだ歯磨きなどが代表で、歯の表面の汚れを落とすとともに歯の表面の再石灰化を促し、色を白く見せるというものだ。

 これらは歯表面の着色成分を落とすなど一定の効果はあるが、歯全体の色調を大幅に改善し、幼児の歯やテレビに登場する芸能人の歯のように白くすることはなかなか難しい。

 坪田院長は「そもそも、なぜ歯が黄ばむのか。そのメカニズムを知っていて欲しい」と話す。誰でも一度は聞いたことがあると思うが、歯は中心部に象牙質という比較的軟らかい部分があり、それを白く半透明な結晶構造を持ったエナメル質が覆っている。年齢とともに歯の色が変わるのは、飲食物によってエナメル質の内部が着色してくるだけでなく、じつは象牙質の色も変化し、半透明のエナメル質を通して、その色が見えるからなのである。

白い歯(左)と黄ばんだ歯(右)
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(左)歯の中心部にある象牙質を、白く半透明なエナメル質が覆っている。 (右)加齢とともに象牙質の色も変化し、半透明のエナメル質を通して、その黄ばんだ色が見える。

 だから表面のエナメル質をいくら磨いても歯全体の色調はそれほど変化しない。むしろ磨きすぎはマイナスだ。坪田院長は「早く白くしようと研磨剤の入った歯磨きをつけ過ぎて磨くと、エナメル質を薄くし色を濃く見せるだけだ」と指摘する。それ以外の歯磨きでも、磨きすぎは歯肉を退行させ見た目を老けさせるほか、知覚過敏などの原因にもなりかねない。

漂白作用のあるジェルを毎晩塗布

 ではすべての歯の色を薄くする方法なんてあるのだろうか。坪田院長は「これまで審美歯科という領域では、歯のホワイトニングに関するさまざまな手法を開発してきたが、通院を含めた利用者の負担が最も少なく、効果が確実な方法と考えられるようになったのが『ホームホワイトニング』だ」と話す。

 ホームホワイトニングでは過酸化尿素という成分を10%含んだ透明なジェルを使用する。過酸化尿素は歯の表面で、体温により少しずつ分解して過酸化水素を生じる。過酸化水素は食品加工の過程において殺菌剤・漂白剤としても用いられる成分で、歯に浸透することでエナメル質、さらには象牙質の着色成分を分解していくというわけだ。

 ホワイトニングの手法のなかには、過酸化水素を歯科医院で塗布するという手法(オフィスホワイトニング)もある。すぐに結果を出したい方には、向いている場合もあるが、白くする効果や色が後戻りしにくいという点では、ホームホワイトニングの方がコストパフォーマンスが高い。

 ホームホワイトニングでは、まず利用者は歯科で口腔内の検査を行った後、歯の色調を検査。その後歯型をとる。数日後、利用者の歯全体にぴったり被さる柔らかい樹脂製のトレー(マウスピース)ができてくる。

 その後のホワイトニングは、利用者自身が夜眠っている間に行う。トレーに適量のジェルを注入し、上下の歯に被せるのだ。トレーは朝起きたときに外すだけ。特に身体上の問題はないが、外した後、1時間ほどはコーヒーなど色の濃い飲食物を避ける方がよいとされている。

ホームホワイトニングで使う樹脂製のトレー
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過酸化尿素を含む透明なジェル
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好みの白さでいつでも中止できる

 ホームホワイトニングの仕方は歯科によって異なる場合があるが、一般的には1度の受診で2~4週間分のジェルを受け取る。そして使用状況や知覚過敏などの問題がないかどうかを知るために坪田院長の場合「3日ほどしたら状態を報告してもらい、必要に応じて再び診察している」と話す。

 順調に色が薄くなっていく場合、3~4週間でかなり色は白くなるという。「そこでホワイトニングを終わらせてもよいが、さらに継続してもっと(芸能人のように)白くすることもできる」(坪田院長)という。

 心配なのは漂白剤の作用で歯がもろくなったりしないのだろうかということだ。坪田院長は「ホワイトニングが登場した当時は、そういった危惧もあり歯科医たちも慎重に取り組んできましたが、現在ではむしろ歯の再石灰化を促進したり、歯周病の原因菌を少なくする作用など、ホワイトニングに多様なメリットがあることも分かってきた」と話す。

 ホームホワイトニングの効果は、「個人差はあるが、1~5年は持つ」と坪田院長。紅茶やコーヒー、赤ワインなど色の濃い飲み物をよく飲む人は、色が戻りやすいという。「そうなったら、ジェルは冷蔵庫で1年間は持ちますので、気になったら2~3日行えば、また元の白さに戻ります」(坪田院長)。

 ホームホワイトニングの料金は、検査、トレー作成、ジェル購入などの費用を含めて8万円程度。ちょっと高めのスーツ1着の新調を我慢すれば、「爽やかな笑顔」を取り戻せる…というわけだ。

坪田健嗣(つぼた けんじ)さん
赤坂フォーラムデンタルクリニック 院長
坪田健嗣(つぼた けんじ)さん 1982年、日本大学歯学部卒業。87年9月、赤坂フォーラムデンタルクリニックを開設。日本歯科審美学会理事、日本アンチエイジング歯科学会常任理事。『最新審美歯科とインプラント 素敵な人は歯が綺麗』(KKロングセラーズ)など著書多数。