間違って使われがちなエルボーバンド
こうしたエルボー痛の成り立ちから、予防・改善法の要となるのは、まず手首のお手入れだ。運動前には、上半身の準備運動とともに、手首や指の動きを司る前腕の筋肉のストレッチも念入りに行おう。また、エルボー痛の人のためにエルボーバンドが売られているが、これも上手に使えば効果があると池上教授は話す。
例えば、多くの人が間違えがちなのは、痛む衝撃を抑えようとして、肘の骨の出っ張った部分に当てがちだ。しかし、池上教授は「エルボーバンドの目的は、前腕の筋肉を上から押さえつけることで、筋肉の瞬発的な収縮力が腱の付着部にダイレクトに伝わらないようにすること」と話す。エルボー痛を予防しようとするならば、骨の出っ張りより指2本分ぐらい手のひら寄りの筋肉に巻くのが効果的だ。また、エルボーバンドの役割は、スイングするときの衝撃吸収にもある。池上教授は「エルボーバンドは、ボールを打つ前にギュッとしめて、打ち終わった後は緩めておく方がよい」と話す。
そして、中高年ゴルファーにとって大切なのはクーリングダウン。ラウンドを終了したら風呂、そしてビールと急ぎがちだが、全身のストレッチを行うことで、筋肉の緊張を緩め腱の負担を和らげ、血行をよくする。またエルボー痛のある人は、肘のアイシング(冷却)などを忘れないようにしよう。
短期的に効果が高いのはステロイド
ゴルフ後の肘の痛みで日常生活にも支障を来すようなら整形外科に相談したい。池上教授は「中高年では、神経障害や靱帯損傷、骨折などエルボー痛でない場合もあるので、きちんと原因を診断してもらい、上腕骨内側上顆炎や上腕骨外側上顆炎であれば痛みをとる治療を行う」と話す。
まずは、消炎鎮痛成分の入った貼り薬を試してみて、痛みがとれないようなら内服の消炎鎮痛剤を服用する。そして、短期的に最も効果が高いのはステロイドの注射剤だ。痛みのために眠れない、仕事の間は痛みを取りたいといった場合に用いられる。池上教授は「痛みが取れるので運動を続けてしまい、さらに腱に負担をかけ、最終的には腱断裂を生じて症状を悪化させることもあります。よく整形外科医と相談して、治療を行って欲しい」と話している。
このほかエルボー痛が長期化した場合は、整形外科医の診察の下で理学療法士によるリハビリテーションを行うなど治療の選択肢は広い。「日常生活に支障を来すほどではないから」と痛みをがまんせず、積極的に治療に取り組みたい。
(次回は、クールビズで露出が増えがちな胸毛の対策についてお伝えします)
東邦大学医療センター大橋病院 整形外科/東邦大学医学部整形外科学講座 教授
