こうした肘の障害(以下、エルボー痛)は、痛みが生じる場所が肘の骨の近辺であることから、ボールをヒットしたときなどの衝撃が骨を伝わることで起きていると思われがちだが、主な原因はそうではない。
エルボー痛は、腕を曲げたり、ひねったりする前腕部の筋肉が肘の関節に付着する「腱(けん)」の部分に炎症が起こる病気だ。東邦大学医療センター大橋病院の池上博泰教授は「腱は、体を動かすとき筋肉の収縮を骨に伝える働きをしている。筋肉は、年をとってもトレーニングで鍛えられるのに対して、腱は年相応に老化が進んでいく」と話す。これがスポーツを楽しむ中高年に腱の障害が多い理由だ。
エルボー痛はなかなか治りにくい。とくに日常的に腕を使う仕事をしている人は長期化することも多い。
しかし、筋肉と腱の仕組みを知ったうえで対処すれば、痛みを軽減することができるという。
筋肉の収縮が腱に伝わって痛みを生じる
肘の痛みがエルボー痛であるかどうかを整形科医が判断するとき、まず確認するのは腱を押して痛み(圧痛)があるかどうかだ。そのためには触りやすい肘の骨の出っ張っている部分を目安とする(通常は腱に痛みがあるが、ひどくなって炎症が周囲に波及すると骨の上でも痛みを感じる)。外側、内側それぞれについて、骨が出っ張った部分およびその場所から手のひらに1cmくらい近い部分を押したときに、痛みを感じればエルボー痛が疑われる。
エルボー痛が疑われる場合、整形外科医は、患者が反らせた手首に逆方向の力を加えて曲げたり(トムセンテスト)、患者の肘を軽く伸ばした状態で椅子を持ち上げたさせたり(チェアテスト)、患者に指を伸ばそうとさせた状態で中指を曲げたり(中伸展テスト)し、それぞれでどんな痛みが出るかを見て原因を探る。手首や指の動きを司る前腕の筋肉も腱を通じて肘とつながっているため、動きの異なる3つのテストを行うのだ。
ゴルフエルボーは、スイングの際に肘がワキから離れすぎ、肘に負担がかかる場合や、肘が固まってほとんど回転せず、手首を中心にスイングするケースなどでも起こるという。いずれの場合も、原因は肘の動きだけにあるわけではない。池上教授は「人間の細やかな手の動きは、指先から肘、肩まで、たくさんの関節が筋肉を介して連動することによって動いている」と話す。こうした筋肉の動きが、年相応に老化した肘周囲の腱に負担をかけて、エルボー痛を生むのだ。
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