総運動精子数が少なくても改善手段あり
この精液検査を行うと、いま自分がどれだけ女性を妊娠させる力があるかが分かる指標になる。最も重要なのは「1回の射精で、元気な精子がどれだけいるか」を表す総運動精子数。精子量×精子濃度×運動率で割り出す。
総運動精子数が1560万以上の場合は、通常の性行為で妊娠する可能性があるが、それ以下の場合は数に応じて人工授精、体外受精、顕微授精など、いわゆる「生殖医療」の手助けを借りて妊娠を目指すことになる。ただ、精液検査の値は変動するので、1度悪い結果が出たとしても、数回繰り返すことで正常と診断されることもある。
総運動精子数 | 妊娠方法の例 |
1560万以上 | 通常の性行為で妊娠する可能 性があるが、1年以上不妊なら 専門医に相談を |
1560万未満1000万以上 | 人工授精が勧められるが、5回 以上で妊娠しないなら、体外受 精、顕微受精も検討する。 |
1000万未満 | 体外受精、顕微受精が勧めら れている |
男性の15%にみられる精索静脈瘤が原因の可能性も
では、何回かの検査で総運動精子数が足りないという結果が出たとき、すぐに「生殖医療」を考えなければならないのだろうか。永尾センター長は「これまではそうなりがちだったが、その前に精子数が足りない原因をよく調べ、適切な治療を行うことで改善することは多い」と話す。
専門的な治療は非常にたくさんあるが、知っておいて欲しいのは日本の成人男性の15%に見られる病気である精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)が精子数の減少をもたらす場合があることだ。精巣に入った血液は枝分かれした静脈を通り、それがだんだんまとまりながら最終的には内精静脈となって大静脈へと戻っていく。このとき右の精巣の静脈は大静脈に直接戻るが、左の静脈は一度腎臓の静脈を経由する。このとき腎臓の静脈の圧力に負けると内精静脈の血液が逆流。枝分かれした精索静脈がコブのように膨れあがった精索静脈瘤となる。症状が進むと左の陰嚢(いんのう)がデコボコに膨らむこともある。
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