そして、2014年の4月に新たな治療薬として認められたのがPDE-5(ホスホジエステラーゼ-5)阻害薬の「タダラフィル」(商品名:ザルディア)だ。実は、この成分はED治療薬として開発されたものだが、尿道の平滑筋をリラックスさせる作用を持つため、排尿症状を改善することができるのだ。高橋主任教授は、「タダラフィルには骨盤周りの血流を改善する効果が期待できるほか、αブロッカーに見られる射精障害などがない。医師は慎重に検討しながら、50代の患者に向けて投薬していくことになる」と話す。
予防にはメタボ改善。気になるがんとの関連
前立腺の肥大について最近、指摘されるようになったのはメタボリックシンドロームとの関連だ。高橋主任教授は「糖尿病(高血糖)、肥満、高血圧、脂質異常症を持つ人に多く見られる傾向が分かってきた。その影響で前立腺内の血管内皮に障害が起きたり、微小な炎症が何回も修復される過程で組織の状態が変わる『線維化』の現象などが生じたりして、前立腺の肥大につながっていくと考えられている。若い頃から、肥満を予防するなど生活改善に務めることは、前立腺肥大症の予防にもつながる。
また、中高年が気になるのは「前立腺が大きくなると、前立腺がんになりやすいのだろうか」ということだろう。これについて高橋主任教授は、「これらの病気は原因となる前立腺の組織部位が異なることが多く、前立腺肥大症が進んで前立腺がんになることはない」と話す。ただし、どちらも50代以降に発症率が急上昇することは知っておくといいだろう。
そこで高橋主任教授が勧めるのは「男性は50代になったら一度は、病院の血液検査でPSA(前立腺特異抗原)を調べてみる」ということ。PSAは前立腺から分泌される生体物質の一つだが、前立腺がんになると血清中の濃度が高くなる(4~10ng/ml)。ただ、値が高ければすぐがんの治療が必要というわけではなく、前立腺肥大、前立腺炎でも上昇するので、自分の前立腺の状態を知るよいきっかけにもなるだろう。
男50代。オシッコで気になる症状が現れはじめたら、早め早めに前立腺のチェックを受けることが大切だ。
(次回は、男性不妊のお悩みに答えます)
日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授
