日経グッデイ

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室

頭を清潔にしても解消しない頑固なフケ、どうすればいい?

定石通りの対策法が通用しない複雑怪奇なケースも

 荒川直樹=科学ライター

まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

 大学3年のとき、親しくなり始めた女友達と就活セミナーに参加。黒のリクルートスーツ姿を彼女に披露したのだが、視線を合わせてくれない。どうしたのかと思っていると、彼女はオレの肩を指さした。恋の終わり。惨めだった。以前から「フケが多いかも」と思っていたが、黒いスーツは雪が降ったかのよう…。以来、色々なシャンプーや薬用育毛剤を試したけど効果なし。40歳を超えた現在では、持っているスーツはグレーが大半。冬場にダークスーツを着るときは、白いマフラーが欠かせない始末…。誰か、フケを少なくする方法を教えて!
(イラスト:川崎タカオ)

 フケには色々なタイプがある。粉雪のような細かいフケもあれば、日焼けした肌がはがれたような大きなフケもある。乾いたフケもあれば、脂っぽいものもある。毎日風呂に入りシャンプーしているにもかかわらず、フケがあるだけで「だらしない」「不潔」な印象になってしまうから困りものだ。

 フケが多い人のことを「フケ症」などと呼ぶこともあるが、頑固なフケは「体質」として諦めなければならないのだろうか。髪をかき上げただけで白いフケがバラパラ舞うような「強者」の治療に日々対応している菊池皮膚科医院(東京都荒川区)の菊池新院長は、「フケは、いわば頭皮の肌荒れ。顔や手足の肌荒れにさまざまな原因があるように、フケ対策の第一歩も原因をつきとめることから始める必要がある」と話す。

 頭皮の肌荒れとはどういうことなのか。

 体の部位にかかわらず、皮膚の細胞は皮下組織で作られ、約4週間で自然に表面から剥がれ落ちる「ターンオーバー」(新陳代謝)を繰り返している。健康な皮膚では、要らなくなった表皮の細胞は入浴時など気がつかないうちに少しずつはがれ落ちている。しかし、皮膚が乾燥していたり炎症が起きていたりすると、目に見えるくらい大きな塊としてはがれる。これが頭皮で起きれば「フケ」となるわけだ。

乾いたフケは「保湿」、湿ったフケは「洗浄」で対策

 フケには脱落する表皮細胞と皮脂が混ざっている。皮脂が少なく角質の水分量が少なければ「乾性フケ」、皮脂や水分の割合が多ければ「湿性フケ」と分類される。例えば、高齢者などに比較的多いのは頭皮の乾燥によって起こる乾性フケ。

 乾性フケは、皮脂の分泌が少なくなることによって、頭皮がダメージを受けた結果として生じるが、アレルギーによっても同様の症状が起こるケースもある。その予防と対策は、保湿が重要となる。毎日洗髪したり、頭皮を強くこすって洗ったりするなどの洗い過ぎに注意すると同時に、低刺激のシャンプーやコンディショナーに替えると症状が改善することが多い。

 一方、頭皮から分泌される皮脂が原因で起こるのが「湿性フケ」である。

 私たちの皮膚には「マラセチア」と呼ばれるカビの仲間が常在菌として住んでいる。皮脂はマラセチアによって脂肪酸という物質に分解されるが、その過程で頭皮を刺激し炎症を起こす。これによって「かゆみ」が生じるとともに、頭皮がまとまってはがれたのが「湿性フケ」になるわけだ。ビタミンB群の不足やマラセチアが原因で顔面や頭部に起こる炎症性疾患を「脂漏性皮膚炎」と呼ぶ。湿性フケは軽度の脂漏性皮膚炎ともいえる。

 湿性フケの予防と対策は、まずは頭皮を清潔に保つことが大切だ。一般的には洗髪は毎日するのが原則だが、洗い過ぎで逆に炎症を強くしてしまう恐れもあるので、低刺激のシャンプーを使うといいだろう。また、かゆみなどの症状が強い場合は、「コラージュフルフル」などの、菌類の生育を阻害する「抗真菌剤」(こうしんきんざい)を含んだシャンプーが効果的な場合もある。

フケには「乾性フケ」と「湿性フケ」がある

フケの種類乾性フケ湿性フケ
頭皮乾燥脂っぽい
質感・さらさら(パラパラ)
・肩まで落ちることが多い
・ジメジメ(しっとり)
・くしや髪にまとわりつく

フケ対策シャンプーが逆に症状を悪化させることも

 ここまでがフケの基礎知識だが、先の対処法を試していても悩んでいる人が多い。

 では、なぜフケが改善しないのか。

 菊池院長は「頑固なフケほど原因は単純じゃない。ひどい湿性フケの患者では脂漏性湿疹のほか、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)、頭部白癬(とうぶしらくも)、接触皮膚炎など、様々な皮膚病が基礎疾患としてあることが多い。前述のマラセチアによる脂漏性皮膚炎はさほど多くはなく、たかだか10~20%程度に過ぎない」

 菊池院長は「湿性フケを治す目的で抗真菌薬の入ったシャンプーで毎日洗髪している脂漏性湿疹の患者さんで、症状を悪化させている原因が逆に抗菌シャンプーに含まれる抗真菌剤成分の接触アレルギー(かぶれ)だったことも多い」と話す。そのほか、リンス、毛染め、ヘアトニックなどの整髪剤の接触アレルギーで頭皮に炎症を起こしていた場合も少なからずある。

 なかなか治らないフケの原因を明らかにするためには、アレルギー性疾患の治療に積極的に取り組んでいる皮膚科医に相談することが重要だと菊池院長は言う。「頭皮の炎症の原因を特定できれば、どんなフケでも必ず対処法は見つかる」(菊池院長)。低刺激のシャンプーに切り替えるだけでなく、皮膚科的な検査により原因の除去を行い、抗真菌剤、ステロイド剤の外用などを上手に使うことで「頭皮の肌荒れ」を治していくのが基本的な治療になる。

 菊池院長は、「ビタミンB2、B6など、ビタミン剤の長期内服はフケに対して非常に有効です。現代社会に多いストレス、食生活の乱れ、睡眠不足などによるビタミンB群の不足が肌荒れの原因の多くを占めるので、地味ではあるがビタミン剤の内服が最も効果的だ」という。

 フケは身近な症状だが、その原因は複雑なケースも多い。一般的な対処法で改善しないときは、体質だと諦めずに、迷わず皮膚科医に相談すべし。

(次回は、男の加齢臭に関するお悩みに答えます)

菊池新(きくち あらた)さん
医学博士、菊池皮膚科医院 理事長
菊池新(きくち あらた)さん 1962年、東京生まれ。87年、慶應義塾大学医学部を卒業。95年、慶應義塾大学医学部皮膚科診療科医長。96年、アメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)へ留学。98年、菊池皮膚科医院を開設。『そのアトピー、専門医が治してみせましょう』(文春文庫)、『Dr.菊池の金属アレルギー診察室』(東京堂出版)、『なぜ皮膚はかゆくなるのか』(PHP新書)などの著書がある。