聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。

いきなり品のないタイトルで申し訳ないが、今回のテーマは「鼻くそ」。あの「目くそ鼻くそ」の、鼻くそだ。
もう少し上品な呼び方がないものかと辞書を引いたりしてみたのだが、やはりこの呼び方で行くしかないことがわかった。なのでここはひとつ、しばらくお付き合い願いたい。
ただ、どうでもよさそうなテーマに見えるかもしれないが、話の中身は非常に重要な内容を含んでいる。鼻くそをはじめとする鼻の中の様子は、あなたの健康状態と、かなり密接につながっているのである。特に花粉症の人やアレルギー性の鼻炎がある人は、要チェックだ。
ということで、早速、タイトルのQ&Aから始めよう。
「冬になると鼻くそが増えるって本当?」
「はい、増えると思われます。正確には、『鼻の粘膜が乾燥すると鼻くそが増える』ですが、冬は空気が乾燥するので、おそらく鼻くそが増える人も多いでしょう」
こう話し始めたのは、日本医科大学耳鼻咽喉科教授の三輪正人さん。鼻の乾燥とアレルギーなどの関係を研究する、鼻症状の専門家である。
鼻水の蒸発が進み、粘膜が乾く
鼻の中は、粘膜で覆われている。その表面を鼻水がうっすらと覆い、湿っているのが本来の姿だ。
粘膜を覆う鼻水の層は、表面の繊毛の働きで徐々に奥へ流れ、最後は胃へ流れ込む。このとき、鼻に入り込んだほこりや花粉などの異物も一緒に押し流されて、粘膜はクリーンな状態に保たれる。鼻水が、粘膜を常に洗い清めているわけだ。
「ところが空気が乾燥すると、鼻水の蒸発が進み、粘膜が乾いてしまいます」(三輪さん)
鼻水が乾燥して、かさぶたのように固形化したものが、鼻くそ。洗い流されるべき異物が沈着した状態といえる。
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- 乾燥した粘膜は、バリア機能が壊れている