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おとなのカラダゼミナール

「武者震い」はなぜ起きるの?

生き残りをかけた戦いの場で体温は上がる

 佐田節子=ライター

“発熱スイッチ”をオンにするプロスタグランジンE2の働き
脳内で作られた発熱物質を感知する神経細胞
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脳における体温調節の司令塔(視索前野)にある神経細胞。細胞表面の緑色に光っている部分に発熱物質(プロスタグランジンE2)が結合する。 (写真提供:中村氏)

 風邪をひいたと思ったら、いきなりガタガタ震えてきて、熱がぐんぐん上がってきた…。そんな激しい症状は、強い感染に見舞われてプロスタグランジンE2が大量に作られた、そんな反応の結果だ。もっとも、高齢者や筋肉量の少ない女性などは、熱を作る力が弱いため、高熱になりにくい傾向があるという。

 急きょ作られたプロスタグランジンE2はその後、脳内でどう働くのか。「体温調節の中枢である『視索前野』の神経細胞に作用します。私たちの研究では、この神経細胞にはプロスタグランジンE2の受け皿となる『受容体』があり、そこにこの物質がくっつくと、それが引き金となって視索前野から『体温をこのくらい上げなさい』といった体温上昇の指令が下ることがわかりました。いわば“発熱スイッチ”がオンになるわけです」(中村氏)。

風邪をひいて体温が上がる仕組み
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 そして、その“設定温度”にまで体温を上げるべく、体は血管を収縮させて放熱を防いだり、褐色脂肪を燃やしたり、筋肉を震わせたりして、せっせと熱を作り出し、体に侵入してきた病原体と戦う。そうして戦いが峠を越して感染が下火になると、脳内でのプロスタグランジンE2の産生も止まり、視索前野からの指令は「体温を平熱に戻せ」というものに変わる。

 すると体は皮膚の血管を拡張させて熱を逃がしたり、発汗を促したりして体温を下げる方向へとシフトする。風邪で熱が高くなったとき、「汗が出てきたらもう大丈夫」などといわれる。まさしく汗は解熱のためのものであり、風邪終息のサインでもあるのだ。

 発熱は病原体と戦うために必要な体の反応だが、あまりに高熱になると逆に体へのダメージが大きくなる。「熱がひどい場合は医師に相談して、解熱剤で熱を下げたほうがいい」と中村氏は話している。

中村和弘(なかむら かずひろ)さん
京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット准教授
中村和弘(なかむら かずひろ)さん 1997年、京都大学薬学部卒業。2002年、同大学大学院薬学研究科博士後期課程修了。薬学博士。専門は生理学、神経科学、自律神経学。米国オレゴン健康科学大学博士研究員、京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット講師などを経て、2014年から現職。体温調節や感染性発熱、ストレス反応などの自律生理機能にかかわる脳内メカニズムの研究に携わる。寒冷時や発熱時の「ふるえ」がどのような脳神経回路の仕組みから生じるかを世界で初めて解明し、注目される。

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