一般に年を取ると血管は硬くなっていく。「血管年齢」とは、血管が何歳相当に硬くなったかを表すものだ。それに対して血管力とは、血管がしなやかさを保ち、内壁がなめらかで、血液をスムーズに流す力を意味する。つまり「血管力が高い」とは、血管が柔らかく、プラークも少ない状態だ。
血管の内壁を構成し、血液と触れる「血管内皮細胞」と呼ばれる部分からは一酸化窒素(NO)が出る。この一酸化窒素には血管を拡張し、しなやかにすることで、動脈硬化を防ぐ作用がある。「血管力が高いと血管内皮細胞から一酸化窒素がたくさん出て、それによっていっそう血管力が高まっていきます」と池谷さんは話す。
食事・睡眠・禁煙・運動の工夫で血管力を高める
では、どうすれば血管力を高めて一酸化窒素をたくさん出すことができるのか? 池谷さんに教えてもらった。
1. 青魚、ブルーチーズ、ショウガを食事で取り入れる
血管内皮機能を高めて一酸化窒素の分泌量を増やす栄養素には、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸として有名なエイコサペンタエン酸(EPA)や、ブルーチーズに含まれるラクトトリペプチド(LTP)がある。これらの食材を含む、バランスの良い食事を心がけよう。
一酸化窒素は血管を拡張させる作用があるが、逆に「血管を拡張させることでも一酸化窒素はたくさん出るようになります」と池谷さんは指摘する。ショウガ、トウガラシ、適度のアルコールなど、一般に「血行を良くするもの」は血管拡張作用があり、一酸化窒素の分泌を増やすという。
2. 深い睡眠を取る
よく眠ることも大切だ。深い睡眠のときに出る成長ホルモンは、子供だけでなく、大人にも欠かせないホルモン。血管内皮細胞の修復を行い、一酸化窒素を出す力を高めてくれる。
3. 禁煙する
百害あって一利なしと言われるタバコは、血管力の維持にもマイナスになる。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化窒素の分泌を抑える。また、大量に発生する活性酸素によって血管内皮細胞がダメージを受け、やはり一酸化窒素の分泌が抑えられてしまう。
ちなみに、「喫煙者が心筋梗塞や狭心症を起こすリスクは、タバコを吸わない人の約3倍も高くなる」(池谷さん)という。
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