いかがだろう。最初は枯葉にしか見えなかったのに、2匹の動物が隠れていることを知ったあとは、姿がくっきりと浮かんで見えるようになったのではないだろうか。
「イラストは何も変わっていません。変わったのは、見ている人の脳です」(竹内さん)
隠れている動物の存在を知った脳は、常にそういう見方でこのイラストを見る。「そこに動物がいるはず」という型にはめて、解釈するのだ。一度そうなってしまうと、初めに見えた、まっさらの「枯葉のイラスト」は、二度と見えない。常に動物が浮かび上がってしまうのだ。
私たちが日常的に行っている「見る」という行為には、こんなタイプの型にはめる解釈が無数に含まれている。「型にはめることで、情報処理の手間が減る。脳にかかる負担が軽くなるわけです」と竹内さんはいう。これも、私たちの脳が生きるために身につけた機能といえる。
「だまし絵」は、そんな脳の隠れた働きぶりを体感する機会だ。不思議な感覚を味わいながら、人知れず働く脳に想いを馳せてみてはいかがだろう。
日本女子大学 人間社会学部心理学科 教授

