実はかさぶたを作らないほうがいい?
最初に触れた通り、かさぶたは傷を治すのに役立っていることは間違いない。一方で、どうしても必要なものでもない…という中途半端な存在だ。
小川さんは「むしろ、かさぶたを作らないようにしたほうが痛みも少なく、きれいに治るんです」と指摘する。
「かさぶたは傷を乾燥から守るためにできるわけですが、できれば傷の表面もかさぶたで乾燥させずに、湿潤環境を保つ創傷被覆材(バンソウコウ)を使うのがベスト。最初から使うほうが治りが早いですが、かさぶたをはがした後に貼ってもいいでしょう」(小川さん)。この治療法は湿潤療法と呼ばれる(参照記事:「皮膚の傷跡が残る場合と消える場合、何が違う?」)。
かさぶたは傷を乾燥から守り、雑菌が入るのをカバーするために“やむを得ず”できるもの。厚いかさぶたは皮膚の再生を邪魔するマイナス面もある。それよりも、皮膚の再生を邪魔しない湿潤療法用のバンソウコウを使えば、かさぶたを作らないだけでなく、治りも早いという。
ただし、傷口が乾かなければ何でもいい、というわけではない。湿潤療法は一歩間違えると細菌が大繁殖する危険もある。余分な浸出液を吸収し、菌の繁殖も防ぐように工夫された専用のバンソウコウを使おう。
まずは、流水で傷口をしっかり洗う
同じく、かさぶたができただけで安心してはいけない。傷口が汚れていた場合など、かさぶたの下で菌が繁殖することもある。
「熱を持っている、周囲が赤く腫れている、といったときは、かさぶたの下で菌が繁殖している可能性が高い。軽く考えず、すぐに病院に行ってください」と小川さん。
怖い感染を防ぐため、まずは流水で傷口をしっかり洗うことをお忘れなく!
日本医科大学形成外科 主任教授
