肺呼吸をする全ての動物は、心拍が揺らいでいる
でもなぜ、吐くときに休むのだろう?
「呼吸の効率を落とさずに済むからです」
呼吸は、外気中の酸素を体内に取り入れるのが目的。息を吸ったときは、外気が取り込まれて肺の中の酸素濃度が高まる。一方、吐いたとき肺に残っている空気は、酸素が減っている。
酸素は、肺から血液中へ取り込まれて全身へ運ばれる。血液の流れを作っているのは心臓だ。心臓としては、肺の中に酸素がたっぷりあるとき(息を吸ったとき)が、働きどころ。ここで手を抜くわけにいかない。でも、息を吐いて肺内の酸素が減ったときは、頑張って血を巡らせても得るものが少ない。そこで、ここぞとばかりにペースを落とし、休むのである。
ふーむ。お見事…と言いたいところだが、その程度の違いで、休んだことになるのでしょうか?
「大違いですよ。その証拠に、カエルからヒトまで、肺で呼吸するあらゆる動物は、この揺らぎシステムを採用しています」と早野さんはいう。
早野さんによると、魚の心拍はほぼ一定で、揺らぎがないという。でも陸上で肺呼吸する全ての動物の心拍は揺らいでいる。動物の進化を考えるなら、心拍が揺らぐメカニズムを身につけた者だけが、地上に進出できたと解釈できる。
「そう。揺らぐ心臓を手に入れられなかった動物は、おそらく地上では生き残れなかった。それぐらい貴重なメカニズムです」(早野さん)
おもしろいのはカエルだ。オタマジャクシのときはエラ呼吸で、このとき心拍は揺らいでいない。だが脚が生え、肺呼吸へ移行する頃になると、脳の中に心拍の揺らぎを生み出す「疑核」という部位ができ、呼吸に合わせて心拍が揺らぎ始めるという。脳を作り変えてまで、わざわざ揺らぎを生み出しているのだ。
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