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おとなのカラダゼミナール

皮膚の傷跡が残る場合と消える場合、何が違う?

皮膚には傷をきれいに消すための限界ラインがあった

 伊藤和弘=フリーランスライター

4つのプロセスを経て傷は「修復」される

 跡が残るような深い傷はどうやって治るのだろう。「修復には4つのプロセスがあります」と市岡教授は続ける。

1 出血凝固期
 皮膚とともに血管が破れて血が出る。出血が止まらないと命に関わるので、カラダはまず傷口の血を止めることを最優先にする。血液中の血小板が活性化して凝固作用のある物質を放出し、血栓(血の固まり)を作って破れた血管をふさぐ。また、空気に触れた血液や浸出液が乾燥してカサブタになり、傷口の表面をふさぐ。

2 炎症期
 傷の部分に白血球が集まり、死んだ組織や外部から侵入した細菌を除去する。「火事で焼けた家に例えると、新たな家を再建する前に残ったガレキを取り除くプロセス」と市岡教授。このとき傷の周辺には腫れ、発熱などの炎症反応が見られる。

3 増殖期
 白血球の一部である「マクロファージ」の活動によって「線維芽細胞」が呼び寄せられ、肌のハリや弾力の基となるコラーゲンなどを作り出す。そこに栄養を運ぶために新しく毛細血管もできる。この線維芽細胞やコラーゲン、毛細血管が集まった「肉芽(にくげ)組織」が、失われた部分を埋めるように盛り上がっていく。しっかりした肉芽組織ができると、それを足場にして表皮を再生する。傷を埋めた肉芽組織は「瘢痕(はんこん)組織」に変わる。

4 成熟期
 表皮の下で組織の新陳代謝が進み、過剰にできた部分が吸収され、傷跡が目立たなくなっていく。市岡教授によると、「この期間はおよそ6ヵ月。したがって交通事故の後遺症などの診断書を書くときは、事故から6カ月は待たなければいけない」という。

深い傷に発生した瘢痕は永久に残る

 前に触れたように、傷跡が「残る」のは傷が真皮の半ば以上まで達した場合だが、それは傷の再生過程でできた瘢痕組織が正常皮膚に変わらず、表皮から透けて見えるためだ。瘢痕は時間とともに色も薄くなって目立たなくなるが、瘢痕は瘢痕として永久に残るという。正常皮膚ではないので、毛も生えないし、汗や皮脂も分泌しない。確かに「治る」のだが、完全に元通りになる再生と違って、修復の場合は「二度と元には戻らない」わけだ。

 傷跡を目立たないようにするには、「瘢痕の量を最小限にすること」と市岡教授。その代表的な方法が「縫合」だ。大きな傷口を縫い合わせることで小さくし、自然治癒を早めるとともに瘢痕の量を抑えられる。

 細菌が入って感染を起こすと傷の治りが遅くなり、瘢痕も大きくなってしまう。擦り傷などは、まず傷口を洗うことが大切だ。本来なら「再生」できれいに治るレベルの傷でも、砂などの異物が残っているとその上に表皮ができて、刺青のように残ってしまう。

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