「ええ、口の中を物理的に刺激することで、唾液の分泌量が増えます。刺激が目的ですから、ペーストを使う必要はありません。小型の電動歯ブラシなどを携帯しておいて、さっと一通り磨けば、気分もすっきりして、サラサラ唾液がよく出るでしょう」(植田さん)
これは、エチケットの面でも有効だという。というのも、唾液には口の中を洗浄する働きがある。緊張状態が続くと、唾液の量が減って口臭が強くなりやすいのだ。もし夜の会食に向けて日中ずっと緊張していたとすれば、口臭が強まっている可能性がある。「そんな場合でも、歯を磨いて唾液量が増えれば、口臭はすぐに収まります」と植田さん。
なるほど。これはいい方法を聞きました。
もっとも、一時的に緊張するだけなら、会食が終わればリラックスできるので、さほど心配はいらない。
「問題は、『食事がのどを通らない』状態が長く続いているケースです」と植田さん。
唾液量が慢性的に減って、食事に支障が出たり、口の中が傷つきやすくなる現象は「ドライマウス」と呼ばれる。自己免疫性の病気や薬剤の副作用が原因で起きることも多いが、そういった明確な原因が見つからない場合、ストレスが長期化している可能性も考えられる。
「食事が飲み込みにくいというのは、ストレスを知らせる体からのメッセージかもしれません。何か無理をしていることがないか、自分の日常を振り返ってみてください」(植田さん)