体への悪影響が心配なのは、前述の硫化水素だ。硫化水素は青酸化合物とほぼ同じ毒性を持つ有毒ガス。1000ppmの濃度で即死すると言われるが、腸の状態が悪いときは大腸に2000ppmも存在することがあるという。そんな化学兵器のような有毒ガスなら、一刻も早く排出したいのが人情である。
しかし、生死を左右するほどの大事には至らないようだ。「腸から全身に回ってしまったら死んでしまいますが、大腸の腸壁の粘膜には硫化水素を解毒する酵素が備わっているし、腸管から多少吸収されたとしても肝臓で解毒されるため、硫化水素が全身を回ることはないのです」(大毛氏)。
おならが減る食物繊維を探せ
どうやらおならを我慢しても一時しのぎに過ぎず、あまり良いことはなさそうだ。それなら、おならをなるべく増やさないようにするには、どうすれば良いのか。「とにかく日頃から便をすっきり出すこと。そのためにも、自分の腸に合った食物繊維をとることが、腸の健康にとっては大事です」(大毛氏)。
食物繊維は、緑黄色野菜や根菜、イモ類、海藻、玄米など、多様な食品から摂取できるが、ものによってはかえってガスが生じるなど、腸内環境を整える上で人それぞれ相性があるという。色々な食物繊維を試して、お通じやガスの調子を見ながら、自分に相性の良いものを判断すると良い。
おならに悩む人は意外に多い。中にはそれが原因で仕事を辞めた人もいるそうだ。下の「おならを増やさない五カ条」も是非参考にしてほしい。
広島大学病院感染症科 教授
