腸と血管、両方にいい生活とは?
(1)水溶性の食物繊維をとる
食物繊維には不溶性と水溶性があり、腸と血管にとって特に重要なのが水溶性だ。大麦、オクラ、山芋、納豆、海藻、アボカドなどに多く含まれている。
腸内の善玉菌は水溶性の食物繊維を使って、酢酸やプロビオン酸といった「短鎖脂肪酸」を作り出す。短鎖脂肪酸は腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑え、ぜん動運動を活発にする。また、水溶性の食物繊維はGLP-1というホルモンの分泌を促し、血糖値の上昇を抑える作用もある。
(2)魚に含まれるEPA・DHAをとる
魚の油に含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった脂肪酸は、体内のあらゆる部位の炎症を鎮める作用が強い。「動脈硬化は血管の炎症」(池谷さん)なので、動脈硬化の予防や改善を期待できるわけだ。さらに、腸の炎症を抑えることで腸内環境も良くなるという。
また、EPAは細胞膜の原料にもなる。赤血球の細胞膜にEPAが増えると柔らかく(流れやすく)なり、血小板の細胞膜に増えると血液が固まりにくくなり、白血球の細胞膜に増えると炎症やアレルギー反応を起こしにくくなる。「最近の子どもにアトピー性皮膚炎などのアレルギーが多いのは、魚の摂取量が年々減っていることも関係しているのだと思います」と池谷さんは話す。
魚の油をしっかりとるには、「ホイル焼きやサバの缶詰がいい」(池谷さん)。ツナ缶も悪くないが、サラダ油が入っていることが多いので注意しよう。サラダ油に含まれるリノール酸は体内でアラキドン酸という脂肪酸に変わる。アラキドン酸はEPAと同じく赤血球や白血球の細胞膜になる脂肪酸で、EPAの働きの邪魔をする。
(3)ラクトトリペプチドをとる
腸内フローラを整えるには、チーズ、キムチ、味噌といった発酵食品がいいことは広く知られている。発酵食品に含まれる乳酸菌が腸内を酸性にし、悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を増やしてくれるのだ。コレステロールとくっつき、体外に排出してくれる働きもある。
発酵食品の中でもブルーチーズ、ゴーダチーズ、米麹などに多いラクトトリペプチド(LTP)は、とても血管にいい栄養素だ。血圧を下げるとともに、血管内皮細胞からNO(一酸化窒素)の分泌を増やし、血管を拡張する作用がある。
池谷さんのお勧め料理は「ゴーダチーズとタマネギ入り味噌汁」。味噌とチーズは発酵食品なので腸にいいし、チーズと味噌を別々にとるよりも同時にとるほうが減塩になる。「味噌汁に入れると豆腐みたいで意外に合うんですよ」と池谷さん。タマネギに含まれるケルセチンという成分も、血管を拡張させ、血圧を下げる作用が強いという。
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