聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。

同じ口の中にありながら、歯に比べると舌を意識することは少ないように思う。歯は毎日せっせと磨くのが普通なのに、舌を磨いている人はあまり見かけない(専用のブラシも市販されているのに)。
舌は味覚を感じる器官だが、それだけではない。例えば言葉を喋るとき、舌は重要だ。英語の「TH」が代表的だが、日本語にも舌がなかったら発音できない子音がいくつもある。そうなると、他人とコミュニケーションを取るのは難しくなるだろう。さらに、「舌がないと、ものを食べることもできなくなります」と指摘するのは日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック(東京都小金井市)院長の菊谷武さんだ。
舌がないとものを食べられない
いや、味が分からなくなるのは分かりますよ。でも歯さえしっかりしていれば、ものを食べることはできるんじゃないですか?
「歯があっても、舌がないと噛めません。舌が歯の上に食べ物を乗せてくれるから、噛むことができるんです」と菊谷さん。
1回噛むと、食べ物が歯の周りにはみ出す。それを舌が再び歯の上に乗せてくれるから、私たちはモグモグと咀嚼(そしゃく)することができる。また、目に見えている舌は全体の3分の2で、残りは食道の上まで続いている。食物を飲み込むときには、この部分が動いて食物を押し込むように食道に送り込むという。
つまり、舌がなければ食べることも話すことも極めて難しくなるということだ。あまり目立たないが、舌は生きていく上で欠かせない重要な器官なのだ。
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- 舌の力と全身の筋力は関係していた