お腹が鳴っても食事をすぐ取らないのが得策
ところで、お腹がグーと鳴ったとき、悩むのが「今、食べるべきか」、それとも「空腹感が去るのを待つべきか」だ。坂井さんに聞いてみた。
「お腹が鳴っているときに食事をすると、空腹期収縮が食後期収縮へとすぐに移行しますから、掃除が中断されることになります。だから、グーッと鳴ったからと言って、すぐには食べない方がいい。せっかくお腹をきれいに掃除してくれているのだから、次の食事までは空腹の状態でいる方が得策です。犬を使った研究では、胃から始まった蠕動運動が小腸の端まで伝わるのに、やはり90分ほどかかることが分かっています。つまり、掃除が一通り完了するには、そのくらいの時間を見ておいた方がいいということです」
それでも、お腹が空いて、90分も我慢できないこともありますが…。
「確かに、我慢するのは難しいですね。ならば、掃除は夜、寝ている間に任せるという手もあります。夕食を早めにとり、それ以降は何も食べない状態で朝を迎える。そうすれば、寝ている間に掃除がきれいに終わります」
坂井さんによると、最近、「小腸内細菌過剰繁殖症(SIBO)」という病状が注目されているという。小腸内によくない細菌が異常繁殖してガスが発生し、腹部の膨満感や下痢などの症状が出る。消化管の運動不全が原因の一つと言われている。
「空腹期収縮で腸をしっかり動かして、お腹の中をきれいにすることは、このような病態の予防にもつながります」と坂井さんは言う。
お菓子などをだらだら食べ続けたり、お腹が空いていないのに食事をしたり…。そんな生活を送っていると、“グーの音”も出なくなる。お腹の掃除はとても大事。“グー”と空腹感のある毎日を送ろう!
埼玉大学大学院理工学研究科、理学部生体制御学科 教授
