椎間板は圧迫されると縮み、圧迫が解けると膨らむ
「その秘密は、背骨の構造にあります」と下出氏は言う。
背骨は、1本の骨ではない。骨盤の上に、椎骨(ついこつ)という骨が24個も積み重なってできている。小さな骨が連なっているから、全体が滑らかに曲がったりねじれたりできるわけだ。
椎骨と椎骨の間に挟まっているのが、椎間板(ついかんばん)。これは弾力性に富む組織で、背骨にかかる重さを支えるクッションの役割を果たす。
椎間板は、外側を線維輪(せんいりん)という硬い組織が囲み、その中に、ゲル状の成分が詰まっている。この中心部が「髄核(ずいかく)」。これがクッションの本体だ。
「髄核は、紙おむつのように吸水性が高い成分でできています。ここに圧力がかかると、じわじわ水分を放出して縮み、圧力から解放されると再び水分を吸い込んで膨らむのです」と下出氏。
夜、寝ているときは、椎間板にかかる圧力が小さい。そのため髄核は水分を吸ってゆっくりと膨らむ。椎間板の厚みが増し、朝には身長が高くなっている。起きているときは椎間板が圧迫されるので、髄核が水分を放出して薄くなる。だから日中は背が縮むわけだ。
計算上、一つひとつの椎間板の厚みが1ミリ程度変化すれば、全体で2センチ以上変わることになる。椎間板のわずかな変化が、身長を大幅に伸び縮みさせるのだ。
「宇宙飛行士が宇宙遊泳から帰ってくると、身長が4~5センチも伸びていることがあるそうです」と下出氏は言う。重力がなくなると、椎間板はそこまで膨らむのか。すごいものだ。
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- 加齢とともに椎間板の中が“干からびる”