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おとなのカラダゼミナール

フィギュアスケート選手はなぜ目が回らないの?

“訓練効果”と“コリオリの力”に酔わないカギがあった

 佐田節子=ライター

逆回りの回転では目が回る選手も

 「フィギュアスケート選手が回転したときも、同じように情報は小脳に伝わりますが、その情報を打ち消すような反応が起こります。GABA(ギャバ)という神経伝達物質が小脳から脳幹へ分泌され、神経の興奮を抑えてしまうのです。この結果、眼振が起こらず、目も回らないというわけです」(石井氏)

 では、なぜこのような現象が起こるのか。それは“訓練効果”だという。来る日も来る日も回転練習を繰り返すことで、4回転ジャンプも高速スピンも、日常生活動作と変わりがないと脳が判断するようになってしまうのだ。まさに訓練の賜物!

 しかし、意外なことに、そんなフィギュアスケート選手でも目が回ることがあるという。いつもとは逆回りに回転したときだ。

 「これも同じテレビ番組で実験したのですが、通常左回りで回転している選手が、回転マシンで右回りを体験したところ、1分もたたないうちに眼振が起こり、目を回してしまいました。逆方向の回転では訓練効果がないため、小脳からの抑制が効かないのです。もっとも、トリノオリンピックで金メダルを獲得したロシアのプルシェンコ選手は、右でも左でも難なく回転できるそうです。もちろん、どちらも訓練効果によるものです」と石井氏は語る。

ハンマー投げと円盤投げ、目が回りやすいのはどっち?

 ところで、回転する競技はフィギュアスケート以外にもある。例えば、オリンピック競技になっているハンマー投げや円盤投げにも、回転がつきものだ。これらの競技は円形のスペース内をくるくる回ってハンマーや円盤を遠くに投げるという共通点があるが、一方は非常に目が回りやすく、もう一方はあまり目が回らないという。さて、ここで問題。目が回りやすいのはどちらだろうか?

 答えは、円盤投げ。その理由の鍵を握るのが、“コリオリの力”だという。石井氏はこう説明する。

 「例えば、直径2メートルくらいの大きな円形の台を左回りに回しながら、その上でボーリングの球を中心に向かって転がすと、どうなるか。球は中心方向には行かず、必ず右方向にずれてしまいます。このずれる力が、コリオリの力です。円盤投げでは、投てきに至る動きの中で頭は大きな円を描きながら移動し、しかも最後に頭を激しく揺さぶるため、三半規管に対してコリオリの力が働きやすい。いろいろな方向への力が働いて、脳に異常な情報が伝わり、目が回りやすくなるのです」と石井氏。

 一方、ハンマー投げは、駒が回転しながら移動するような動きを経て、投てきする。頭が描く円も小さく、大きく揺さぶられることがないため、コリオリの力が働きにくい。だから、円盤投げに比べると目が回りにくいのだという。

 ちなみに、フランスとオランダの研究チームは、「なぜ円盤投げは目が回り、ハンマー投げは目が回らないか」と題し、これをコリオリの力を用いて証明。2011年度のイグノーベル賞(物理学賞)を受賞した。ちょっと風変わりな研究内容で人々を笑わせ、そして考えさせてくれる、そんな研究に対して贈られる賞だ。

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