聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。

トイレに駆け込み、締めていた筋肉の緊張をふーっと緩める。無事に放出できたときのえも言われぬ解放感は、誰でも経験したことがあるだろう。
えっ、どっちの話をしているのかって?
失礼。今回取り上げるのは「おしっこ」の方です。
ただ、今回のテーマである「色」に限っていうと、おしっことうんちの話は、実は途中まで全く同じストーリー。尿の黄色と便の茶褐色は、「同じ素材」が出発点なのである。
その素材とは、血液。正確にいうと、赤血球に含まれる赤いタンパク質「ヘモグロビン」だ。それが、おしっことうんちを色付けるまでの長い道のりを、たどってみよう。
脾臓から肝臓へ、さらに腸の中を通って…
ヘモグロビンは、肺で酸素と結合し、全身へ届ける重要なたんぱく質。血液が赤く見えるのは、ヘモグロビンの色だ。
「赤血球の寿命は120日ほど。寿命を迎えた赤血球は脾臓(ひぞう)で分解されますが、そのときにヘモグロビンも一緒に壊されます」。こう話すのは、日本医科大学名誉教授で、腎臓病学が専門の飯野靖彦さん。今回は、飯野さんに、おしっこの色に関する探究のナビゲーターをお願いしよう。
ヘモグロビンには、赤い色素の「ヘム」分子が含まれる。これは反応性が非常に高い分子で(だから酸素と結合しやすいわけだが)、放っておくとすぐに周りの分子と化学反応を起こす。そのままでは細胞を傷つける恐れがあるので、確実に解体する必要がある。
そのため、ヘモグロビンから切り離されたヘムは、体の中をあちこち移動しながら、何段階ものプロセスを経て徹底的に壊される。その過程で、色も変化するわけだ。
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- 赤い色素の色はどこで変えられる?
