日経グッデイ

おとなのカラダゼミナール

おしっこの色はなぜ黄色いの?

色、頻度、臭い、泡立ちから健康状態が分かる

 北村 昌陽=科学・医療ジャーナリスト

聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。

(©Maurizio De Mattei-123RF)

 トイレに駆け込み、締めていた筋肉の緊張をふーっと緩める。無事に放出できたときのえも言われぬ解放感は、誰でも経験したことがあるだろう。

 えっ、どっちの話をしているのかって?

 失礼。今回取り上げるのは「おしっこ」の方です。

 ただ、今回のテーマである「色」に限っていうと、おしっことうんちの話は、実は途中まで全く同じストーリー。尿の黄色と便の茶褐色は、「同じ素材」が出発点なのである。

 その素材とは、血液。正確にいうと、赤血球に含まれる赤いタンパク質「ヘモグロビン」だ。それが、おしっことうんちを色付けるまでの長い道のりを、たどってみよう。

脾臓から肝臓へ、さらに腸の中を通って…

 ヘモグロビンは、肺で酸素と結合し、全身へ届ける重要なたんぱく質。血液が赤く見えるのは、ヘモグロビンの色だ。

 「赤血球の寿命は120日ほど。寿命を迎えた赤血球は脾臓(ひぞう)で分解されますが、そのときにヘモグロビンも一緒に壊されます」。こう話すのは、日本医科大学名誉教授で、腎臓病学が専門の飯野靖彦さん。今回は、飯野さんに、おしっこの色に関する探究のナビゲーターをお願いしよう。

 ヘモグロビンには、赤い色素の「ヘム」分子が含まれる。これは反応性が非常に高い分子で(だから酸素と結合しやすいわけだが)、放っておくとすぐに周りの分子と化学反応を起こす。そのままでは細胞を傷つける恐れがあるので、確実に解体する必要がある。

 そのため、ヘモグロビンから切り離されたヘムは、体の中をあちこち移動しながら、何段階ものプロセスを経て徹底的に壊される。その過程で、色も変化するわけだ。

 「ヘムはまず、脾臓の中でビリルビンに変換され、血中に出てきます。ビリルビンは黄色です」

 おっ、ここで色が変わった。それがおしっこになるのですか?

 「いやいや、ビリルビンは肝臓に運ばれて、さらに化学変換されたあと、腸の中へ捨てられるのです」

 腸に入ったビリルビンは、腸内細菌の働きでウロビリノーゲン、さらにステルコビリンという成分へと変化する。このステルコビリンが茶褐色。つまり、便の色だ。

 でも、おしっこは?

 「腸内のウロビリノーゲンの一部は、血液中に再吸収されます。これが腎臓を通って尿に出てきて、あの黄色になるのです」

 なるほど。ずいぶんいろいろなところを通っているものだ。老廃物を捨てるのも、大変なことなんだな。

赤血球が分解されて尿や便に色を付ける
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血液中に含まれる赤血球は脾臓、肝臓で分解されたあと、腸の中へ捨てられ、おしっこを黄色に、うんちを茶色にする。

おしっこが濃くなるのは、脱水のサイン

 通常、赤血球の分解スピードは一定なので、おしっこの色素も一定のペースで作られる。おしっこの色の濃さが変わるのは、排泄される水分の量が変化するためだという。

 「体液濃度を一定にキープするために、腎臓は尿の水分量を細かく調節しています。体内の水分量が増えたときは、尿を増やす。すると、おしっこの色が薄くなります。逆に、水分が減ったときは、尿の量が減るので、色が濃くなります」

 つまり、おしっこの色が濃くなったときは、体内の水分が不足気味。いわば「脱水のサイン」だと飯野さんはいう。

 「よく、“疲れると尿の色が濃くなる”などと言われますが、ただの疲労で濃くなることはありません。その疲労感の原因は脱水ですから、すぐに水分を補給してください」

 もっとも、朝一番のおしっこの色が濃いのは正常。睡眠中は、尿の量を減らすために濃縮されるのだ。日中に濃いおしっこが出たら要注意と覚えておこう。

色だけでなく、においや泡立ちにも要注意

 「ほかにも、おしっこから分かる病気のサインがあります」と飯野さん。まずは頻度。尿は、1日7~8回ぐらい出るのが標準的。だが膀胱炎などになると、その刺激で何十回も行きたくなる。

 色も注目ポイント。腎臓や膀胱に感染があると、牛乳のように白く濁る膿尿や、おしっこに血が混じって赤くなる血尿が出ることがある。こんな時はすぐに病院へ行こう。

 においや、泡立ちに変化が出ることも。糖尿病などで、尿の匂いが甘酸っぱくなることがある。また、たんぱく尿や尿糖になると、妙に泡立ちが良くなるという。

 「尿には、体のいろいろなサインが現れます。普段からちょっと意識するだけで、早めに異常を見つけられます」と飯野さん。なるほど~。覚えておきたいものだ。

飯野靖彦(いいの やすひこ)さん
日本医科大学 名誉教授。湘南医療大学学部長。
飯野靖彦(いいの やすひこ)さん 専門は内科学、腎臓病学、透析療法、腎臓移植など。著書『専門医が答えるQ&A腎臓病』、『世界で一番やさしい腎臓病』など多数。