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おとなのカラダゼミナール

笑うと健康になるってホント?

“体”と“心”への健康効果を医学的に検証

 佐田節子=ライター

聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。

笑うことで免疫力が上がる。(©Ferli Achirulli/123RF.com)

 「笑う門には福来る」と言うが、これは健康についても同様に言えることだろうか。笑うと気分がすっきりするから、心の健康には確かによさそうだが、体の健康となるとどうだろう。笑うと病気にかかりにくいとか、病気が治る、なんてこともあるのだろうか。

 「笑いの健康効果については、いろいろな研究で確かめられています。そもそもの始まりは、1976年に米国のジャーナリストのノーマン・カズンズが書いた闘病記。彼は笑うことで自らの難病を克服したと発表しました。これを皮切りに医学的な研究が始まり、笑いによって免疫力が上がる、痛みやストレスを感じにくくなるといった研究報告が相次ぐようになりました」。こう説明してくれたのは、東京家政大学家政学部栄養学科准教授の大西淳之氏だ。大西氏は、筑波大学名誉教授の村上和雄氏らと共同で、遺伝子レベルで笑いの健康効果を研究している。

笑いは健康に良い遺伝子のスイッチをオンにする

 こんな興味深い研究がある。“笑いの総合商社”吉本興業の協力の下で行った実験だ。

 参加したのは中高年の糖尿病患者19人。500kcalの食事を摂った後、1日目は糖尿病についての単調な講義を受け、2日目には吉本興業の芸人による漫才を鑑賞して大笑いした。そして、いずれの日も食事から2時間後に採血をして、血糖値がどのくらい上がったかを調べた。その結果は―。講義を聞いた日の食後血糖値は平均で123mg/dL上がったのに対し、漫才を鑑賞した日は77mg/dLの上昇だった。つまり、漫才で爆笑した日は講義を聞いた日に比べ、食後血糖値の上昇が46mg/dLも抑えられていたのだ。

“笑い”は糖尿病患者の食後血糖値の上昇を抑制した
[画像のクリックで拡大表示]
2型糖尿病患者19人が対象。退屈な講義を聞いた場合と漫才で大笑いした場合(いずれも40分間)で、食後2時間の血糖値を比較した。結果は、大笑いした時の方が46mg/dLも血糖値の上昇幅が少なかった。(出典:Diabetes Care.2003;26:1651-1652. Personalized Medicine Universe.2012;1: 2-6)

 また、がん細胞などを殺す「NK(ナチュラルキラー)細胞」を調べたところ、大笑いした後は、もともとNK細胞の働きが低い人は高くなり、高すぎた人は低くなって、適正な状態に落ち着いていた。

 さらに、血液中の白血球を遺伝子レベルで調べてみるとどうだったか。「笑った後には、感染予防やNK細胞の活性化などに関わる遺伝子群の発現が高まり、一方で、糖尿病や抑うつ、炎症反応に関わる遺伝子群の発現は低下するという傾向が認められました。つまり、健康にとって良い遺伝子のスイッチがオンになり、逆に健康を損なうような遺伝子はオフになっていたのです」と大西氏。このような遺伝子レベルでの変化が起こった結果、食後血糖値の上昇が抑えられたり、免疫力が高まったりしたと考えられるわけだ。

 「そもそも糖尿病の患者さんは、不安や恐怖、悲しみ、痛みなどのストレスがあると、血糖値が上がりやすくなることが分かっています。ところが、笑うと、それとは逆の現象が起こる。笑いは、喜びや楽しみ、心地よさ、満足感といった“快”の感情が表に現れ出たもの。そういった前向きな心の状態が身体によい影響を及ぼすのです。まさに『病は気から』ですね」(大西氏)

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