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おとなのカラダゼミナール

笑うと健康になるってホント?

“体”と“心”への健康効果を医学的に検証

 佐田節子=ライター

笑うことでストレスに強くなる!

 笑いが体の健康に役立つことは分かったが、心の健康についてはどうか。大西氏らは、ラットに毎日笑いの刺激を与える「笑うラット」の実験で、継続的な笑いの効果を調べてみた(Neuroscience Letter.(2013); 536:85-89)。「えっ、ラットが笑うの!?」とまずは驚かされるが、実験はこんな風に行われたという。

 生まれて間もないラットを母親や兄弟から引き離して1匹だけで飼育すると、ラットはストレスに対して非常に敏感になる。その“孤独ラット”を2つのグループに分け、一方はそのまま飼育し、もう一方には毎日5分間、お腹をこちょこちょする「くすぐり刺激(Tickling)」を2週間与える。

 ラットはくすぐられると、ある周波数の鳴き声を発する。これは兄弟たちとじゃれ合って遊んでいるときに発する鳴き声と同じなのだという。つまり、その声は楽しさや嬉しさといった“快”の感情を表す「笑い声」であり、それを発するとき、ラットは「笑っている」とみなされる。

 2週間後、ラットには気の毒だが、恐怖心を植え付けるための実験を行う。ある音が鳴ると、床に電気が走って「痛い!」と感じるのだ。するとラットは音が鳴っただけで、恐怖を覚え、すくんでしまうようになる。ところが、くすぐり刺激を継続的に与えられたラットは、そうでないラットに比べ、音が鳴っても恐怖ですくむ回数が明らかに少なかったというのだ。

 「毎日継続的に笑っていたことで、恐怖の記憶が薄らぎ、ストレス反応が緩和されたと考えられます。私たち人間もこのラットのように、笑いにつながる“快“の感情を日々重ねていくことで、ストレスをうまく乗り切ったり、心の傷を癒したりすることができるようになるかもしれない。日頃からよく笑うことで、そんな効果を期待できるかもしれません」(大西氏)

“作り笑顔“にも効果がある!

 笑いは体と心に効く。家族や友人同士で冗談を言い合って笑うもよし、漫才や落語で爆笑するもよし、飲み会やカラオケで大笑いするもよし。楽しい“快”の感情が増えれば、緊張もほぐれ、人間関係も潤う。ただ、そうは言ってもなかなか笑えないという日もあるだろう。そんな時にぜひ試してほしいのが、“作り笑顔”だ。

 「笑うと、口角を上げる大頬骨筋(だいきょうこつきん)や目の周りの眼輪筋(がんりんきん)などの表情筋が動いて、笑顔ができる。別に楽しいことがなくても、この表情を作るだけで脳は笑っていると錯覚し、気分がほぐれてきます。箸を歯で横にくわえて、“作り笑顔”をするだけでも、脳のドーパミン系の神経活動が活発になって、快の感情が引き起こされたという報告もあります」(PLOS ONE (2009) Jun 1;4(6):e5754)。大西氏はそう言って、積極的な笑顔作りを勧める。

 『幸福論』を書いたフランスの哲学者・アランは、こんな言葉を残した。「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」。これは医学的にも正しい。人生、笑ったもの勝ちである。

大西淳之(おおにし じゅんじ)さん
東京家政大学家政学部栄養学科准教授
大西淳之(おおにし じゅんじ)さん 1964年生まれ。筑波大学大学院博士課程生物工学学際カリキュラム修了。博士(学術)。専門は生化学、精神栄養学。米国National Institutes of Health留学、北海道大学大学院理学研究科助教、東京医科歯科大学難治疾患研究所准教授、財団法人 国際科学振興財団主任研究員を経て、2010年より現職。筑波大学名誉教授の村上和雄氏が主宰する「心と遺伝子研究会」のメンバーでもある。笑いや瞑想、そして食がもたらす心と身体の相互作用について研究中。

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