過敏性腸症候群の人は激しい腹痛・下痢にも
さらに人によっては、お腹のキリキリした痛みにとどまらず、耐え難い腹痛や下痢にまで症状が悪化してしまうケースもある。「私たちの研究では、こうしたタイプの人の中には過敏性腸症候群(IBS)の患者が多く含まれていることが明らかになりました。大腸が激しく動くため、腹痛や下痢などの症状が起きてしまうのです。IBSは、全人口の5~10人に1人と言われるほどありふれた病気。症状が軽度で、診断に至っていないという人もたくさんいます」と福土氏は言う。
IBSは、ストレスが引き金になって、腹痛や下痢・便秘などの便通異常を繰り返す病気だ。仕事や人間関係などのストレスを感じると、突如として腹痛や激しい便意に見舞われる。トイレに行って排便するとすっきりするが、職場や通勤電車内など、時と場所を選ばずに起こるので厄介だ。本人の悩みも深刻で、日常生活にも支障が出かねない。
IBSの人は、周囲から「気が小さい」「神経質」などと言われがちだが、必ずしもそんなことはない。「実際に腸を調べてみると、腸自体が刺激に対して非常に過敏なのです」と福土氏は言う。
空気の入った小さな袋を肛門から入れて、腸の敏感度を調べる検査法がある。袋の中の空気を徐々に増やして腸壁に圧力をかけていくと、あるところで「痛い」と感じるが、IBS患者の場合は健常者が何も感じないくらいの圧力でも腹痛を覚えたり、また健常者が弱い痛みしか感じないような刺激でも強い腹痛を覚えたりする。
腹式呼吸や瞑想でストレス対策を
ストレスを受けるたびに腹痛に見舞われるのはつらいものだ。トイレに駆け込まなくてもいいようにするには、どうしたらいいのか。福土氏は「何よりストレス対策が重要」と、こんなアドバイスをしてくれた。
「1日1回でもいいので、腹式呼吸をしたり、瞑想をしたりして心を落ち着かせる時間を持つといいですね。呼吸は、ゆっくりと長く息を吐くようにすると効果的です」。また、生活習慣を見直すことも大切だ。「夜更かしをやめて、早寝早起きにするなど、規則正しい生活を送るように心がけてください。『通勤電車で便意を催したら…』という不安から朝食を抜く人も多いですが、むしろ食事は取ったほうがいいです。不安だからと回避していると、かえって不安が増大します。食べたところでどうということはないという状態を経験し、それに慣れていった方が生活しやすくなります。早めに起きれば、余裕を持って食事やトイレの時間も確保できます」(福土氏)。それでも症状が治まらなければ、早めに医師へ相談しよう。
東北大学大学院医学系研究科行動医学教授
