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おとなのカラダゼミナール

そっくりな親子と似ていない親子、その分かれ目は?

外見から運動能力までを司る遺伝子の不思議

 伊藤和弘=フリーランスライター

似てるけど同じではないのが親子

 ランダム・アソートメントによって精子や卵子の染色体の組み合わせが4パターンになるのは、染色体が1セット2本しかない場合。実際には人間の染色体は1セット23本なので、2の23乗で838万8608種類もの精子や卵子ができる計算になる。

 それだけではない。「さらに、精子や卵子を作る際には、父母とは異なる染色体を生む、“組換え”という現象も起こります」と太田さんは続ける。先の図では祖父母が持っていた染色体を受け継ぐ前提で説明したが、実際は祖父方と祖母方の遺伝子が混じった、今までにない新しい染色体ができることもあるという。

 「このランダム・アソートメントと組換えによって、精子や卵子の染色体パターンは無数に増える。その結果、親と子の遺伝子は必ず違ってくるでしょう。共通点も多いけど、相違点も多い。“似ているけど同じではない”のが親子なんです」(太田さん)

 材料は先祖代々受け継いだ同じ遺伝子でも、どれを選び、どれを捨てるかで一人一人が変わってくるわけだ。

 外見が父親にそっくりな息子がいたとしても、それはバリエーションの一つに過ぎない。性格、体質、能力などを細かく見ていけば、「父親と違うところ」は必ず見つかる。

 愛する子供にはできるだけ有利な遺伝子を渡してやりたいが、自分のどの遺伝子を受け継ぐかはまさに「神様のおぼしめし」で、コントロールすることはできない。

 しかし、なぜそこまでして新しいパターンを増やそうとがんばるのだろう?

 「効率を考えれば、ひとりでどんどん自分のコピーを作るだけの無性生殖のほうがはるかに増えやすい。一方、自分とは違う遺伝子を持った子供を作るオスとメスの有性生殖は、効率が悪い代わりに多様性ができるわけです。父と母のDNAが混ざることで、新しいものができる。天変地異が起きて環境が激変しても、バリエーションが多ければ誰かが生き残れる可能性が高くなるでしょう」と太田さんは説明する。

 実際、HIVウイルスに感染しない、つまり絶対エイズにならない体質の人もいるという。将来、世界中でエイズが猛威をふるって人類が滅びかけても、こういう人は生き残っていけるわけだ。

 そう考えると、「似ていない親子」は多様性を求める生物の戦略的には正しい方向に進んでいる―と言ってもいいのかもしれない。

太田邦史(おおた くにひろ)さん
東京大学大学院総合文化研究科 教授
太田邦史(おおた くにひろ)さん 1962年生まれ。東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻博士課程修了。理化学研究所研究員を経て、2007年より現職。同年、文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)受賞。専門は分子生物学・遺伝学・構成生物学。著書に『自己変革するDNA』(みすず書房)、『エピゲノムと生命』(講談社)など。

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