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ビジネスパーソンに贈る 眠りの超スキル

「パジャマ離れ」が快眠を妨げていた

睡眠効率が悪化しがちなスウェット・ジャージ派

 佐田節子=ライター

仕事やプライベートの時間をやりくりするために、真っ先に削ってしまうのが「睡眠」ではないだろうか。また、年齢とともに、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりする人も多いに違いない。もう眠りで悩まないための、ぐっすり睡眠術をお届けしよう。

 あなたはパジャマ派だろうか? それともスウェット・ジャージ派?

 寝るときに着るものと言えば、すぐに思い浮かべるのがパジャマ。しかし、パジャマで寝ている人は、思ったほど多くないようだ。

「スウェット・ジャージ派」が46.4%で最大

 2013年にワコールが新社会人310人に行ったアンケート調査によると、就寝時によく着ている衣類は「スウェット・ジャージ」が46.4%で、最も多かった。若い世代ほど、パジャマ離れが進んでいるようだ。

 何を着て寝ようと睡眠には関係ないと思うかもしれないが、実はそうでもないらしい。パジャマを着て寝るだけで睡眠が改善したという報告がある。ワコールとオムロンヘルスケアの共同実験の結果によるものだ。

 普段パジャマを着用していない20~40代の男女30人に1週間、パジャマを着用して寝てもらい、その際の睡眠状態を調べた。するとパジャマを着て寝た夜は、着ていなかったときよりも、寝つきに要する時間が平均で9分間短縮した。さらに夜中に目が覚める回数が、平均3.54回から3.01回に減少した。寝床にいる時間のうち、実際に眠っている時間が占める割合を「睡眠効率」と呼ぶが、これも84%から87%に上昇。寝床の中で眠れないでいる時間が減ったわけだ。

 日本睡眠学会理事も務める、江戸川大学社会学部人間心理学科の福田一彦教授によると、朝起きたときに「ああ、よく寝た」と思えるかどうかは、主に寝つきまでの時間と中途覚醒の回数で決まるという。寝つきまでの時間が9分減り、中途覚醒の回数も減少傾向になったという結果は、パジャマ着用が睡眠全体の質向上に貢献したと解釈できる。

寝間着をパジャマに替えると、寝付き時間、夜中の目覚め回数が変わる
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普段パジャマに着替えないで就寝している20~40代の男女30人が参加した実験。1週間、従来のスタイル(パジャマ以外)で就寝し、翌週はパジャマ(ワコール「睡眠科学」)を着用して1週間就寝。「寝付き時間」と「夜中の目覚め回数」について比較した結果、パジャマを着用したときのほうが、どちらも改善されることが分かった。いずれも「オムロン睡眠計(HSL-101)」で睡眠状態を測定した。ワコールとオムロンヘルスケアの共同実験(2013年1月実施)。

パジャマは発汗と寝返りを助けてくれる

パジャマで寝るほうが睡眠効率がアップするという実験結果も。(©Artisticco LLC-123RF)

 パジャマに着替えるだけで、寝つきがよくなり、中途覚醒が減り、睡眠効率もアップするとは、ちょっとびっくり。いったいなぜなのだろうか。福田教授はこう分析する。

 「パジャマを着る効果は、大きく2つあると考えられます。一つは、衣服としてのパジャマの効用。そして、もう一つが眠るモードへの切り替え効果です」

 眠りにつくとき、体の中では大きな変化が起こっている。体温の急激な低下だ。

 「体温を下げるには体の熱を逃がす必要があるため、睡眠中はかなり汗をかきます。特に睡眠前半の1~3時間は、大量に発汗することで体温をぐんと下げ、体を深い眠りに導いている。このとき着ているものが、吸湿性や通気性に優れているかどうかは、体熱放散の仕組みからすると、非常に重要。スウェットなどの素材では、汗の気化が妨げられる可能性があります。要は、ぐっすり眠るには、それに適した衣類があるということです」と福田教授は話す。

パジャマで起きている時間と寝る時間を区切る

 もう一つのパジャマの効用は、「起きている時間」から「眠る時間」へと気持ちを切り替える心理的な効果だ。

 「睡眠の質という点から言うと、大事なのは、起きている時間と眠る時間をきちんと区切ること。部屋着のままだと、どうしてもこの区切りがつきにくいが、パジャマに着替えると『これから寝るぞ』という気持ちに自然と切り替わる。寝るモードに切り替える有効なツールの一つが、パジャマと言えるわけです」と福田教授。

「入浴」、「パジャマ」、「明かりを暗く」で寝付き改善

 確かに、パジャマに着替えると、「今日も終わり。あとは寝るだけ」という気持ちになる。覚醒から睡眠への移行は、スイッチのオンオフのようにすぐに切り替わるものではない。だからこそ、睡眠の1時間くらい前から、お休みモードに徐々に切り替えていく準備が重要なのだという。そこで福田教授が勧めるのが、3つの“睡眠儀式”。体温調節と光のコントロール、そしてパジャマ着用だ。既に「体温調節」(過去記事「就寝1時間前までの入浴で、寒い冬でもスッキリ快眠」を参照)と「光のコントロール」(同「意外? ブルーライトを浴びれば目覚めスッキリ」を参照)については、本連載でも紹介しているので、こちらも参考にしてほしい。

 「寝る1時間前までに入浴を済ませ、入浴後はパジャマを着用する。そしてリビングの明かりを暗めにして、ゆったりと過ごす。すると体温が下がってきて自然と眠くなるので、その段階でベッドに入って眠ればいい。これら3つを毎日の習慣にするだけでも、確実に寝つきがよくなるはずです」(福田教授)。

素材、サイズ、強さでパジャマを選ぶ

 では、これからの季節、どんなパジャマが適しているか。日本睡眠改善協議会認定睡眠改善シニアインストラクターでもあるエス アンド エー アソシエーツの松浦倫子さんにアドバイスしてもらった。

 「ポイントは大きく3つ。素材とサイズ、そして強さです。まず素材は肌触りがよく、吸湿・吸水性、通気性に優れ、蒸れないものであるかどうかをチェックしましょう。サイズは、体を締め付けず、ゆったりとしているけれど、寝がえりを打っても寝乱れしない程度が丁度良いです。そして、汚れの吸収がよく、頻繁に洗濯をしても劣化しにくい強さを持ち合わせている。これらを兼ね備えたパジャマが理想的ですね」(松浦さん)

 さらに暑い時には、冷感が持続するクール素材のパジャマがお勧めだ。例えば、あるクール素材(グンゼ「ラディクール」)と綿100%素材のパジャマを比較した実験では、クール素材のパジャマを着たときの方が寝床内の温度と湿度が下がり、深い眠りが増加する傾向にあったと報告されている(Journal of the Japan Research Association for Textile End-Uses, Vol.56, pp.266-273, 2015)。

 最近は快眠を得られやすいように開発されたパジャマも登場している。自分に合ったこだわりのパジャマは、夏の快眠を得るための強い味方になりそうだ。

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