日経グッデイ

ビジネスパーソンに贈る 眠りの超スキル

ベッドで本はNG…不眠を解消する5つのルール

睡眠サイクルは早寝早起きではなく“早起き早寝”で修正

 伊藤和弘=フリーランスライター

仕事やプライベートの時間をやりくりするために、真っ先に削ってしまうのが「睡眠」ではないだろうか。また、年齢とともに、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりする人も多いに違いない。もう眠りで悩まないための、ぐっすり睡眠術をお届けしよう。

ベッドを読書の場所にすることは不眠症への第一歩。(©PaylessImages-123RF)

 疲れているはずなのに布団に入っても眠れない。夜中に何度も目が覚める。しっかり眠ったはずなのに、熟睡した気がしない…。不眠症睡眠障害に悩んでいる人は多く、厚生労働省の「平成26年国民健康・栄養調査」によると、「睡眠で休養が十分にとれていない者」は成人の21.7%で、2年前の調査より約5%増えている。いったいどうすればグッスリ眠り、スッキリ起きることができるのだろう?

ルール1:起きる時刻を決める

 これまでに多くの不眠症患者を治療してきた、むさしクリニック(東京都小平市)の梶村尚史院長は、「睡眠障害にはいろいろなタイプがありますが、どのタイプでもまず睡眠リズムを直すところから始めないといけません」と話し始めた。睡眠リズムが乱れている状態だと、睡眠薬を飲んでも効果がないという。

 「睡眠リズムを整える」とは、すなわち「規則正しい生活を送る」ということ。基本は早寝早起き。早起きするためには、まず早く寝ようと考えがちだが、梶村院長は「それが失敗の原因」と指摘する。

 「早く寝ようと思っても、なかなか簡単には眠れないでしょう。最初は午前6時半とか7時とか、起きる時間を決めること。早寝早起きではなく、“早起き早寝”という意識で始めるのがコツなんです」

ルール2:休日の寝坊は2時間以内に

 たとえば日曜日に正午まで眠っていたとして、午後10時にベッドに入っても簡単に眠れるわけはない。夜眠くなる時間は朝起きた時間で決まるのだ。そのため、まずは一定の時間に起きることから始めなければならない。

 いつもと同じ時間に寝て早く起きようとすれば、最初は睡眠不足になっても仕方がない。そこを我慢して続けていくと、だんだん体内時計が整い、自然に早い時間に眠くなってくるという。

 「就寝時刻は多少ずれてもいいですが、起床時刻は絶対に守ってください。大切なのは平日と休日で起きる時間を変えないこと。睡眠不足が続いている場合はやむを得ませんが、それでもいつもより2時間以上遅くなってはいけません」(梶村院長)

 つまり、普段は午前7時に起きるなら、休日も遅くとも9時までに起きるということ。昼まで眠っていては、平日にせっかく整えた体内時計が狂ってしまう。逆に言えば、日頃の睡眠不足は週末(土日)のプラス2時間でカバーできる程度に抑えておくことだ。

 必要な睡眠時間は人によって異なるが、起床時間が決まれば自動的に就寝すべき時間も決まってくる。梶村院長は患者の一人一人にこれまで快適だった睡眠時間などを聞き、その人ごとの睡眠時間を割り出していくが、「一般に15歳で8時間、25歳で7時間、45歳で6時間半、65歳で6時間が必要な睡眠時間の平均値です」と話す。

ルール3:ベッドにいる時間はできるだけ短くする

 必要とする睡眠時間が6時間半で、朝は7時に起きるなら、ベッドには夜の12時に入ればいい。

 ここで注意すべきは、必要以上に早くベッドに入らないこと。逆に朝は目が覚めたらすぐにベッドを出るようにする。つまり、ベッドにいる時間をできるだけ短くすることだ。必要な睡眠時間プラス30分を目安にしよう。

 ベッドで本を読むのもいけない。「読書するなら別の場所で。あくまでもベッドは眠るためだけの場所、と習慣づけて脳に覚えさせることで、ベッドに入ったら条件反射ですぐに眠れるようになっていきます」と梶村院長。

 規則正しい睡眠リズムが整えば、やがて目覚まし時計がなくても同じ時間に目が覚めるようになっていく。「体内時計がしっかりしてくると、就寝時間が1~2時間遅くなった日もいつもと同じ時間に起きられるようになる」という。

ルール4:寝る前のスマホ、入浴時刻、寝酒に要注意!

 では、グッスリ眠るための注意点を挙げていこう。

 まずは、パソコンやスマートフォンの使用について。ベッドに持ち込むのはもちろん、寝る2時間前からは一切見ないようにするのが理想的という。パソコンやスマホの画面から出るLEDのブルーライトがメラトニンという眠気を誘うホルモンの分泌を抑えるとともに、交感神経が刺激されて目がさえてしまうからだ。

 「逆に朝起きてからパソコンやスマホを使えば、交感神経が刺激されて目が覚める効果もあります」(梶村院長)

 次に入浴は寝る1~2時間前、ぬるめの風呂に入るのがいい。血行が良くなって熱が放出され、深部体温(体の奥の温度)が下がって眠くなる。ただし、熱い風呂は交感神経を刺激して眠気を消してしまう。「やっぱし風呂は熱くねえと!」という江戸っ子気質の人は就寝の2時間以上前に入るようにしよう。

 寝酒は快眠を導くと思っている人も多いが、実はそんなことはない。寝付きが良くなる代わりに、「深い睡眠を減らし、夜中に目が覚めやすくなります」と梶村院長は注意する。

ルール5:日光と朝食が体内時計を整える

 予定していた起床時間になったら、眠くてもぐずぐずせずにベッドから出ること。その後に、日光を浴びる、顔を洗う、朝食を取る、コーヒーや紅茶などカフェインの入った飲み物を飲む、といった行動をすると交感神経が刺激されて目が覚める。

 睡眠リズムを整えるうえで特に有効なのは、光を浴びることと朝食。光が脳にある体内時計(親時計)、朝食が臓器にある体内時計(子時計)をそれぞれ整えてくれる。なお、体内時計を整えるためには、睡眠リズムに加えて、毎日の食事を同じ時間帯に取るようにするのも効果的だ。

 要するに、不眠症の治療は睡眠リズムを整えること、すなわち“毎日同じ時間に起きる”ことが基本になる。

不眠症を改善するための生活習慣
グッスリ寝るための心得スッキリ目覚めるための心得
・眠くなる前に床につかない・毎日同じ時刻に起きる
・パソコン、スマートフォンの使用は就寝時刻の2時間前まで・起床時に日光を浴びる ・パソコン、スマートフォンを使う
・寝る前の飲酒は控える・コーヒーを飲む
・風呂は就寝時刻の1~2時間前にぬるま湯で(冬は40~41度、夏は39~40度)・熱めのシャワーを浴びる ・冷たい水で顔を洗う

 「睡眠の質が悪いと感じたら、まずリズムがずれていないか確認しましょう。平日と休日の起床時間に大きな差がないか。ベッドにいる時間が長すぎないか。それらをチェックして、問題が見つからなければ医師に相談するといいでしょう」と梶村院長はアドバイスする。

梶村尚史(かじむら なおふみ)さん
むさしクリニック 院長
梶村尚史(かじむら なおふみ)さん 1955年生まれ。睡眠医療認定医。山口大学医学部卒業。同大学附属病院神経精神医学教室、国立精神・神経センター武蔵病院精神科医長などを経て、2003年より現職。杏林大学医学部非常勤講師。専門は精神医学、睡眠医学、時間生物学。著書に『快眠ハンドブック』(PHP研究所)、『「朝がつらい」がなくなる本』(知的生きかた文庫)など。
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