仕事やプライベートの時間をやりくりするために、真っ先に削ってしまうのが「睡眠」ではないだろうか。また、年齢とともに、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりする人も多いに違いない。もう眠りで悩まないための、ぐっすり睡眠術をお届けしよう。

寒い冬の夜は手足が冷たくて、ベッドに入ってもなかなか寝つけない…。思うように快眠を得られない毎日を送っている人も多いのではないだろうか。足利工業大学睡眠科学センターの小林敏孝教授は、その理由を次のように説明する。「眠るときは本来、体をリラックスさせる副交感神経が優位になりますが、寒いと逆に体を緊張させる交感神経が高ぶるため、寝つきが悪くなります」(小林教授)。
そこで、小林教授が冬の快眠対策として一番に薦めるのが「入浴」だ。お風呂で体を芯から温めることで寝つきがよくなり、睡眠の質を改善できる。お風呂に入ると心身ともにリラックスするが、理由はそれだけではない。「ポイントは体温の変動です。寝る前の入浴によって『深部体温』(脳や体の中心部の温度)を一時的に上げておくと、その後に体温が急降下する。この深部体温の下がり方が急激なほど、強い眠気がやってきます」と小林教授は説明する。
手足がぽかぽかしている時、体の深部体温はどんどん下がっている
そもそも、睡眠は体温の変化と密接な関係にある。体温は昼間、活動しているときは高く、夜は徐々に下降して、眠っているときに最も低くなる。夜に手足がぽかぽかしてくると眠くなるという経験は誰にでもあるだろう。体温が上がったように思いがちだが、実は体の深部ではまったく逆の現象が起こっている。ぽかぽかするのは手足の血管が拡張して、体内の熱を逃がしているから。その結果、深部体温はどんどん下がり、体をリラックスモードや入眠へと導く副交感神経が優位になる。ところが、手足が冷えていると、この熱放散がうまくいかず、深部体温が下がりにくくなる。このため、寝つきも悪くなるというわけだ。
入浴によって深部体温を一時的に上げれば、入浴後に温まった皮膚からの放熱が盛んになって、深部体温はがくんと下がる。まるで山の頂上から滑降するかのような体温下降カーブを描くのだ。

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- 入浴は睡眠全体の質も高める