そもそも風邪って? 原因はウイルス? 細菌?
飲酒との関係について触れる前に、まずは、「風邪」とはそもそもはどういう状態を指すのか、基本的なところから大谷さんに聞いていこう。
「風邪とは、急性上気道感染症の1つで、風邪症候群(common cold)と呼ばれています。専門的な定義では、『さまざまなウイルスを原因として鼻汁や鼻閉(鼻づまり)などの上気道炎症状をきたし、自然軽快する症候群』と言います」と大谷さんは話し始めた。
「上気道とは呼吸器のうち鼻から喉(のど)まで、つまり気管、気管支にまで発展しない部分のこと。そこに現れる喉の痛み、咳、鼻水、鼻づまりなどが上気道炎症状と言われます」(大谷さん)

恥ずかしながら、風邪に専門的な定義があったなんて初めて知った。大谷さんはさらに「風邪ではこうした症状が通常3~7日、長くても2週間程度で治ります」と続けた。
確かに風邪をひいても治ることを前提として考えているので、「単なる風邪」くらいの認識でしかない。だが「炎症が上気道を通り越し、気管支に広がると気管支炎に、肺に到達すると肺炎になることもある」と大谷さんは注意を促す。どうやら「たかが風邪」と、甘く見てはいけないようだ。
大谷さんは、「風邪の原因はほとんどがウイルスで全体の8~9割、残りの1~2割が細菌」なのだと説明してくれた。風邪をひいたときに、よく「念のため抗生物質を」などと言われることがあるが、「抗生物質は細菌を殺すための薬で、風邪で抗生物質を処方されるのは『念のため』以外のものではありません。今は、風邪で不要な抗生物質は出さないのが常識」(大谷さん)なのだという。
「風邪と言えば抗生物質」と思っていた…。ここでしっかりと知識をアップデートしなくては! 抗生物質に関しては正直、モヤモヤっとしていたので、大谷さんの説明でスッキリできた。
では、風邪には、具体的にどんなウイルスが関係しているのだろうか?
「実は、風邪の原因となるウイルスは200種類以上あると言われています。最もメジャーなのは春と秋に猛威をふるうライノウイルスで、風邪の30~40%がこのウイルスが関係していると言われています。『鼻風邪ウイルス』という異名があるように、鼻づまりや喉の炎症を引き起こします。冬に流行しやすいのはコロナウイルスで、鼻、喉の他、発熱を伴うこともあります。風邪の約1割はコロナウイルスによるものと言われます」(大谷さん)。このほか、RSウイルスやアデノウイルスなども風邪の原因となるウイルスだという。
200種類以上!! こんなにあるとは思わなかった。これは想像を遥かに超えている。
また、「風邪とは分類が異なりますが、上気道感染症を生じる最も怖いウイルスが、皆さんご存じのインフルエンザウイルスです。冬に勢いを増す、今の時期、最も注意すべきウイルスです。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型があります。A型とB型は大流行して重症化することが問題になります。一方で、C型は軽症で風邪と区別がつきませんので、問題となりません」(大谷さん)
「インフルエンザの感染後は免疫が低下して、肺炎を発症することも少なくありません。特に高齢者は肺炎合併率が高いのですが、高齢者に限らず、どの世代でも油断できません」と大谷さん。
インフルエンザともなれば、マスクなどで自衛するのももちろんだが、まずはワクチンで予防するのが第1であろう。「人にうつさないためにもワクチンで予防することが大切です。ワクチンを打っても感染することがありますが、病状が軽減します」(大谷さん)
