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左党の一分

お酒で顔が赤くなる人は骨折リスクが2.5倍!

飲酒と骨粗しょう症【前編】お酒を飲むと骨粗しょう症が進む?

 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

お酒を飲んで顔が赤くなる人の骨折リスクは約2.5倍!

 ここまでの説明で、骨粗しょう症、そして大腿骨近位部骨折の怖さはよくわかった。この事実を踏まえた上で、宮本さんたちの研究チームの研究の詳細に迫っていこう。

 まずは、宮本さんたちが行った研究の内容を簡単に説明しよう。今回の研究では、大腿骨近位部骨折を起こした92人を「大腿骨近位部骨折群」(骨折群)、大腿骨近位部骨折を起こさず、骨粗しょう症の診断基準も満たさない48人を「正常群」として、それぞれの群の方々の遺伝子(ゲノムDNA)を回収した(*1)。

*1 なお、「正常群」のうち、骨粗しょう症の治療中、治療経験がある人、糖尿病など骨粗しょう症の原因となる病気にかかった人は除外した。

 ここで宮本さんが着目したのが、アルコール代謝の過程で生じるアセトアルデヒドの分解に関わるALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)の活性だ。「骨折群」と「正常群」を対象に、ALDH2の活性が高い人と、活性が低い人(rs671遺伝子を保有する人)の比率を比較した(*2)。活性が低い人は、お酒を飲むと顔が赤くなる人、いわゆるフラッシャーと呼ばれる人がほとんどだ。

*2 お酒を飲んで顔が赤くなりやすい体質の遺伝子多型がrs671。ALDH2の活性が低い遺伝子(ALDH2*2)を1つ、または2つ持つ人が該当する。

 その結果、「『骨折群』では、『正常群』に比べてALDH2の活性が低い人の比率が高いことが明らかになったのです。このことから、お酒を飲んで赤くなる人は、骨折のリスクが高くなることが示唆されたのです」(宮本さん)

 なるほど、そういうことだったのか。だが、リスクが高くなるといっても、その度合いがどのくらいかも重要だ。先生、どうなのでしょうか?

 「研究の結果、ALDH2の活性が低い人は、正常群に比べ、骨粗しょう症による骨折のリスクが2.48倍になるということがわかりました」(宮本さん)

 何と! 2.5倍も高いとは。フラッシャーの人は、骨折に人一倍注意しなければならないということか。前述のように私もかつては、お酒を飲むと顔が赤くなった。長年飲み続けていることで赤くなりにくくなったとはいえ、遺伝的要素は生まれつきのものであることを考えると、フラッシャーであることは確実であろう(両親ともほぼ下戸)。ああ、何と悲しい通告なのだろうか。


お酒の強さに大きく影響するALDH2の活性

 体の中にアルコールが入ると、まずADH1B(アルコール脱水素酵素)によって、毒性を持つアセトアルデヒドに分解される。次にALDH2の働きによって、アセトアルデヒドは無害な酢酸に分解され、最終的には水と炭酸ガスなどに分解される。このADH1BやALDH2の活性は遺伝的要因が大きく影響する。特に、お酒の強さに大きく影響するのがALDH2の活性だ。

体内に入ったアルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH1B)によってアセトアルデヒドに分解される。その後、「アセトアルデヒド脱水素酵素」(ALDH2)により、無毒な酢酸になり肝臓から排出される
[画像のクリックで拡大表示]

 ご存じのように、遺伝子は両親からそれぞれ1つずつもらい受ける。両親から分解能力が高い遺伝子をそれぞれ引き継いだ人(活性型)は酒に強い酒豪タイプで、酒を飲んでも赤くならない人(ノンフラッシャー)がほとんどだ。

 分解能力が高い遺伝子と、分解能力が低下した遺伝子をそれぞれ1つずつ引き継いだタイプ(不活性型、低活性型)は、全く飲めなくはないが、基本的には酒に弱いタイプ。普段からアルコールに親しんでない場合、顔も赤くなりやすい(フラッシャーと呼ぶ)。そして、分解能力が弱い遺伝子を両親から引き継いだ人(失活型)は、全く飲めないタイプ。ほとんどの場合がフラッシャーだ。なお、日本人の場合、酒豪タイプは約5割、酒に弱いタイプは約4割、全く飲めないタイプが約1割となっている(詳しくはこちらの記事を参照)。


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