「慢性膵炎になったら、断酒しか方法はありません。しかし、予防ということであれば、節酒で対処できます。『これだけ飲んだら慢性膵炎になる』という目安はないので、休肝日ならぬ『休膵日』と思って飲まない日を設けつつ、量を控えていきましょう。また、脂肪の多いおつまみもできるだけ避けてください。脂っこいものを食べると、それを消化するために膵液が多く分泌され、それが慢性膵炎のリスクにもなるからです」(佐野さん)
昨今、脂っこいファストフードをデリバリーし、それをアテに酒を飲む「ファストフード飲み」に凝っている酒豪がいるが、これを続けたら膵炎まっしぐら。しかも喫煙者となれば、さらにリスキーだ。事実、佐野さんによると「タバコを吸うことで血管が収縮し、血行が悪くなることで、慢性膵炎のリスクが上がる」そうだ。
「また糖尿病などの生活習慣病にかかっている方、コレステロール値が高い方、運動をしない方も膵臓の病気にかかりやすいと言われています。ウォーキングなど、日々継続できる軽い運動をするよう心がけましょう」(佐野さん)
佐野さんに、膵臓の病気になりやすい人の特徴を挙げてもらった。以下の10項目のうち6つ以上に当てはまる人は要注意だという。また、1つ目の「お酒が大好きで、ほとんど毎日飲んでいる」に該当する人は、そのほかに当てはまらなくても注意したほうがいいそうだ。
膵臓の病気になりやすい人の特徴
- お酒が大好きで、ほとんど毎日飲んでいる
- 揚げ物やラーメンなど、油っぽいものが好き
- 魚より肉が好き
- 野菜はほとんど食べない
- 運動はほとんどしない
- 生活が不規則で睡眠不足のことが多い
- ストレスがたまっている
- コレステロール値が高いと言われたことがある
- タバコを吸っている
- 糖尿病である
膵臓の病気を早期に見つけるには?
まとめると、対策としては、節酒に運動、そして定期的な検査といったところだろうか。ところで、「膵臓の病気は見つけにくい」と言われているが、今はどうなのだろう。
「確かに胃の裏側にある膵臓の病気は、他の臓器に比べ見つけにくいことは事実です。しかし、以前に比べれば発見率は格段に上がっています。まずは、自治体の検診や人間ドックなどで、定期的に『腹部エコー検査』を受けてください。それで膵臓に異変が見つかれば、精密検査に進みます」(佐野さん)
腹部エコー検査では、機器をおなかに当てて超音波で臓器の状態を調べる。これで異変が見つかれば、「超音波内視鏡」によって精密検査を行う。これは、通常の胃カメラのように内視鏡を入れ、胃腸の壁越しに超音波を当てて膵臓を調べることができる(参考記事「5年生存率わずか10%、怖い膵がんを小さいうちに見つける方法」)。
「超音波内視鏡の検査は、3時間近くかけて行うのでお手軽とは言えないかもしれません。しかし、膵臓の病気を早期に見つけるのに大いに役立っています」(佐野さん)
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2回にわたって、急性膵炎と慢性膵炎の詳細についてお伝えした。どちらも思い出すだけでゾクッとする症状だが、膵臓の病気の発見率が以前よりも上がっていることはせめてもの救いである。これからは、休肝日はもちろん「休膵日」も意識し、膵臓に優しい飲み方を心がけたい。
(図版制作:増田真一)
