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左党の一分

健康を気にするなら、安い酒より高い酒?

少量飲酒のリスク【後編】飲み放題はやっぱり飲み過ぎる

 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

 吉本さんによると、日本のアルコール摂取の特徴として、大量に飲む人が、全体の飲酒量の多くを占める傾向があるのだという。「上位3割の人が消費されている7割の酒を飲むという報告もあります。少数の人がたくさん飲酒しているということです」(吉本さん)

 確かに、いわゆる「酒豪」と言われる人が居酒屋に行ったら、ビールをジョッキで3杯、4杯、日本酒を3合、4合などと杯を重ねるのは、見慣れた風景である。こういった人たちが全体の飲酒量を牽引しているわけか。

 「飲酒量が増えるほど健康リスクは高まります。『適量』は20g(日本酒1合)で、生活習慣病のリスクがアップするのは40g(同2合)、全ての病気のリスクが上がるのが60g(同3合)です。私たち専門医はこれを『1合、2合、3合ルール』とも呼んでいます。女性や高齢者はいずれも半量程度でそれに該当します」(吉本さん)

 「1日当たり60g以上の飲酒は、健康を害するのは明らかですから、こういった人は減らしていただくのが望ましいわけです。ですが、これまで日に60gのアルコールを飲んできたような人が、いきなりゼロというのも無理がありますよね。ですから、こうした人には1日20gに近づけるような飲み方をしてくださいとお伝えしています」(吉本さん)

 「そして、多くを占める少量飲酒の方の場合、例えば、1日20g飲んでいる人であれば、最新の研究で少量であってもリスクがある指摘が出ているわけですから、さらに少なくしましょうとお伝えしています」(吉本さん)

 「無理にゼロにする必要はないが、今よりもアルコールの摂取量を減らすことを意識しよう」ということだ。アルコールが及ぼすリスクを今より減らしたいなら、やむを得ないだろう。とはいえ、吉本さんがアドバイスする内容は、これまで連載で紹介したものと大きくは違わない。違いは、これまで適量で飲んでいた人も、可能なら減らしたほうがいいということだ。

飲酒は小分けにして、休肝日も設けるのが理想的

(c)monticello-123RF

 少し安心したところで、次に、現況の日本の基準である「1日に20g」、週に換算すると140gになるが、この140gをどのように飲んだらいいのか。もう少し突っ込んだ話を吉本さんに聞いてみた。

 「飲み方には個人差があるので、『これじゃなきゃダメ』という決まりはありません。自由度がある程度あったほうが長続きしますから。できれば、休肝日をきちんと作りつつ、140gを小分けにして飲むようにするといいですね。休肝日は肝臓を休めるという目的もありますが、酒量を自分でコントロールできることを示すためにも設けることをお勧めします」(吉本さん)

 つまり、週140gだからといって、1日、2日でそれを一気に飲むことは避けて、酒量を分散させる。ただし、毎日は飲み続けずに休肝日も設ける、ということだ。これならそう無理せずとも実践できそうである。なお、「女性や高齢の人、そして顔が赤くなる人はより飲酒量を減らしてください」と吉本さんは話す。

 前述したように、1日60gを超えるような飲酒は健康リスクがあるのはもちろんだが、それに加えて、「飲んだ翌朝に飲酒運転にならないためにも、多量飲酒をしないようにと指導しています」と吉本さん。

 当連載の飲酒運転の回でも紹介したが、日本アルコール関連問題学会などのアルコール薬物関連の学会は、体内におけるアルコールの分解速度は1時間に4gとして、飲酒したら、運転するまでに「飲酒量(g)÷ 4」時間以上待つように、というガイドラインを出している。もちろん分解能力には個人差があるわけだが、この基準だと、多量飲酒の基準とされる60gを飲んだ場合、約15時間かかる計算になる。夜の10時ごろまでこの量を飲んでいたら、翌日の午前中はまだ酒が残っている人もいるわけだ。

 実際、吉本さんの診療の場に、日中であってもお酒が残っている人が来ることがあるという。「呼気チェックをすると完全に飲酒運転レベルです。お酒が残って臭い人もいますが、ほとんどの人は呼気チェックしないと本人も他人も分かりません。最近では、飲酒運転への目が厳しくなっています。飲酒運転で捕まったことが原因で、社会的地位を失うことを避けるためにも、夜遅くまでの多量飲酒は控えてください」(吉本さん)

 確かに、朝の電車で、いかにも「夜遅くまで深酒していました」と思わしき酒臭い人と遭遇することがある。これもまた社会的信頼を失う要因にならないかと余計な心配をしてしまう。

 また、吉本さんが休肝日の設定を強く勧めるのには、こんな理由もあるという。

 「休肝日を設けることなく、毎日飲む人の中に『夜、眠れないから寝酒代わりに毎日酒を飲む』という方がいます。お酒を飲むと寝入りばなは確かに良くなりますが、アルコールには覚醒作用があるので、睡眠の質は悪くなります。この場合、お酒の力を借りて無理やり眠るのではなく、睡眠の専門医に診てもらうなど、不眠を根本から解消することが先決です」(吉本さん)

 確かに、私の周囲にもウイスキーやジンなど高アルコールの酒を寝酒として毎晩飲んでいる人がいる。しかしよく聞くと「寝酒」とは言えないレベルの量なのだ。それを本人に指摘すると、「体がアルコールに慣れてしまったのか、徐々に量が増えてしまった」と話していた。中には「酒と睡眠薬を併用しないと眠れない」という人も…。こうなるとアルコールではなく、確実に睡眠の専門医やアルコール依存症の専門家の力が必要である。

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