そして安部さんは、こう続けた。
「糖尿病や動脈硬化になると、心臓の働きも悪くなります。心臓は血液を全身に送り出すポンプとして重要な臓器です。心臓の働きが悪くなると、さまざまな障害がカラダのあちこちに現れ、血流も悪くなり、それがさらに免疫に影響を及ぼすのです」(安部さん)
「ストレス解消」は別の方法で
話が進むにつれ、酒好きには耳が痛い内容ばかり……。
免疫力を下げないためにも、先ほど挙がった糖尿病や動脈硬化などのリスクを上げてしまうような飲み方は控えなければならない、というのは百も承知である。
しかし「全く飲まない」というのは、酒好きにとってかえってストレスになってしまう。安部先生、ストレスをためないためにも、何かいいアドバイスをいただけないでしょうか?
「おっしゃる通り、お酒好きの方にとって、断酒はかえってストレスになりますよね。ストレスは免疫に悪影響を及ぼしますので、飲み方に工夫をされるとよいと思います。免疫の第1段階である自然バリアの粘膜を傷めないよう、のどがチリチリするようなアルコール度数の高いお酒は、避けたほうが無難です。どうしても飲みたいなら、炭酸水や水などで割って飲むことをお勧めします。また、生活習慣病やがんなどのリスクを上げないためには、飲み過ぎないようにしましょう。休肝日も取り入れてほしいですね」(安部さん)
日常的にウイスキーやジンなどをストレートで好んで飲む方は気を付けたほうがよさそうだ。病気にならないためにも、もちろん多量飲酒の習慣は避けたい。適量といえば、1日当たり、日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインならグラス2杯程度だ。さらに安部さんは、こんなアドバイスもしてくれた。
「新型コロナウイルスによって家飲みが増えた方も多いと思うのですが、私はこれを機に飲み方をアップデートしてほしいと考えています。一つはお酒をストレス発散のツールにしないということです。ストレス解消のために飲むと、どうしても酒量が増えてしまいますから。ストレスは運動など、お酒以外のことで発散するようにしましょう」(安部さん)
緊急事態宣言以降、家飲みが増え、人によってはこれまで以上に酒量が増えた方も多いのではないだろうか。また、生活様式の変化によって、ストレスが増大し、ついお酒に走ってしまう人も少なくないはず。しかし、出社する必要がなくなったので自由な時間が増え、ジョギングやウォーキングを始めたというポジティブな話もよく耳にする。
先生、運動といえば、お酒に代わるストレス解消ツールとしてはもちろん、免疫力をアップさせるのに効果的なんですよね?
「その通りです。しかしあくまで適度な範囲にとどめておきましょう。というのも、運動することが“義務”となってしまうと、かえってストレスになってしまうからです。また激しい運動は免疫力を下げるというデータもあります」(安部さん)
そういえば、「アスリートは風邪を引きやすい」という話を耳にしたことがある。「激しい運動によって体にストレスがかかると、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)というストレスホルモンが分泌され、これによって免疫が抑えられてしまう」と考えられている。

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