昔は「女性はあまりお酒を飲むべきではない」という意見が少なからずあったが、最近では、多くの女性が“ごく普通”にお酒を楽しむようになっている。実際、「女子会」などといって、女性同士で飲む機会も増えた。だが、連載の以前の回でも紹介したように、「女性の飲酒は乳がんのリスクを高める」など、女性固有のリスクがあることもわかっている。他に、女性だからこそ気を付けるべきアルコールのリスクはないのだろうか? 気を付けるべき時期はいつなのだろうか。今回は、女性と飲酒の関係についてまとめた。
「ああ、鋼鉄の肝臓よ、いずこへ」
年齢を重ねる度に感じるのが、「酒に弱くなったな」ということ。20代の頃の酒の単位は「杯」ではなく「本」。どんな酒でもボトル一本が飲み会での単位で、ワインを赤白飲んで、ウイスキーで〆るのは当たり前だった。当時、私は週刊誌の記者をしていたのだが、空が白々とするまで飲んで、仮眠してロケなんていうのは日常茶飯事。ロケの後はまた朝まで飲み会コースと、この繰り返しだった。この頃は“二日酔い”という言葉とは無縁。またこれだけ飲んでいてもγ-GTPは12~15IU/dlと、まさに“鋼鉄の肝臓”の持ち主だった。(※編集部注:γ-GTPの基準範囲は、50IU/dl以下(日本人間ドック学会「検査表の見方」より)
だが、40代になると、深酒すると翌日まで残るようになった。さらには“第二のお年頃”と言われる更年期に足を突っ込んだ途端、深酒するまでの量を飲めなくなるという、「ああ、鋼鉄の肝臓よ、いずこへ」という何とも情けない状態になってしまった(それでも一般の女性よりは強いかもしれないが)。こうした症状を抱えているのは私だけではない。私の周りの同じ年頃の更年期を迎えている女性の多くが「酒に弱くなった」と嘆く。個人差が大きいとはいえ、更年期は多くの女性にとって、生活のスタイル、さらにはお酒との付き合い方を変えざるを得ない重要な時期なのだと改めて感じる今日このごろだ。
また、連載の以前の回でも紹介したが、女性の飲酒は乳がんの発症リスクを高めるということもわかっている。現時点では、正確な因果関係はわかっていないようだが、酒量が多くなるにつれ、発症リスクが高くなる傾向が明らかになっている。その取材の際は「過度に心配する必要はありません」と先生に言っていただいたものの、発症リスクを高めたくないなら、飲酒量は増やさないに越したことがない。このときには、女性には特有のアルコールのリスクがあるのだと実感させられた。
ううむ、女性だからこそ気を付けるべきアルコールのリスクは他にないのだろうか? そもそも女性は男性と同じように飲んでいいのだろうか…。ここはきちんと整理しておく必要があるように思う。そこで今回は、更年期障害や女性ホルモンに詳しい「よしの女性診療所」の吉野一枝先生に、女性と飲酒について話を伺った。

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