そして3つ目は「微生物学障壁」。「これは、皮膚や腸などに存在する常在菌を指します。やたら顔を洗ったり、風邪をひいて少し具合が悪いと抗生物質を飲んでしまう人がいますが、こうしたことを考えると『もったいない』と思いますよね。私自身、顔はあまり洗わないようにしています」(安部さん)
風邪をひいて処方された抗生物質を飲んだのはいいが、下痢をしてしまうことがあるが、安部さんによると、この現象により「ありがたい常在菌が減ってしまう」のだという。
「若い世代は自然バリアがしっかりしているため、病原体に強いのです。新型コロナを例にとっても分かるように、若い世代は感染しても重症化しにくいですよね。これは自然バリアがしっかり働いているためと考えられます。ただし個人差があるので、『若いから絶対に重症化しない』とは言い切れません」(安部さん)
汗や胃酸、常在菌などによって守備が固められている自然バリア。アルコールはこれらにどのような影響を与えるのだろうか。
「例えばウォッカのように、のどがチリチリするようなアルコール度数の高いお酒は注意が必要です。こうしたお酒は、のどの粘膜を傷つける恐れがあるからです。粘膜に傷がつくと、免疫力は低下します」(安部さん)
左党の中には、ウィスキーやウォッカがもたらす、あのチリチリとした刺激がたまらないという方も少なくないだろう。そのチリチリこそが粘膜を傷つけているとは知らなかった。
アルコールは「マクロファージ」を混乱させる?
皮膚や粘膜のちょっとした傷や乾燥などがあると、病原体が自然バリアを突破して体内に侵入する。次の第2段階では、病原体を貪食するマクロファージという“刺客”が用意されている。
「第2段階である『自然免疫』で大活躍してくれるのは、『マクロファージ』と呼ばれる病原体をパクパクと食べてくれる食細胞です。マクロファージは自分の中に病原体を取り込んで死滅させるだけではなく、サイトカインという物質をまき散らします。サイトカインにより、血管内から好中球(白血球の一種)をはじめとする援軍が呼び込まれます」(安部さん)
そして、こうした自然免疫の働きにより、熱や腫れなどの「炎症」が起きる。


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- 獲得免疫も飲酒の影響を受ける