「炎症が起きると、結果として病原体が弱ります。分かりやすく言うと、風邪をひくとのどが腫れたり、鼻水が出たりしますよね。あれはまさに、のどや鼻で炎症が起き、自然免疫の力によって病原体を退治しようとしているのです。ですから、既往症のある方や高齢者はさておき、若い方は自然免疫がせっかく働いているのですから、少しのどが痛いくらいで薬を飲んでしまうのは、もったいないと私は思いますね」(安部さん)
そして安部さんによると、アルコールはこの食細胞であるマクロファージにダメージを与えてしまうという。
「アルコールがマクロファージに直接働いて混乱させ、機能を低下させたり、働きを抑制させると考えられています。特にだらだらと長い時間飲むほど、その作用は大きくなる傾向が強いと言われています」(安部さん)
酒飲みからすれば、この時点で恐怖を感じるのだが、まだほかにもある。「新型コロナウイルスをはじめとするウイルス感染の場合、サイトカインの一種である『I型インターフェロン』にまで影響を与えてしまうのです。I型インターフェロンは、ウイルスに感染した細胞の防御機構を活性化する働きがありますが、アルコールはI型インターフェロンの産生を抑制するといわれています」(安部さん)
新型コロナの脅威が騒がれている現在の状況で、ウイルスから身を守ってくれるI型インターフェロンにまで影響を与えるとなると、グラスを持つ手が止まってしまいそうだ(涙)。
獲得免疫も飲酒の影響を受ける
では「最後の砦」ともいえる第3段階の免疫システムはどうなのだろう?
「自然免疫でも病原体が撃退できなかった場合に働くのが、免疫システムの最終兵器ともいえる『獲得免疫(適応免疫)』です。これはマクロファージのように常に体の中をパトロールしているものではありません。そのため、病原体の感染から数時間で自然免疫が活性化するのに対し、獲得免疫が活性化するのには数日間のタイムラグがあります」(安部さん)

