夏はやっぱり冷たいビールがおいしい。あまりにおいしすぎて、気づけば短時間で大ジョッキを何杯も!などという左党も少なくないだろう。ビールだとついジョッキを重ねてしまうが、水だとこうはいかない。なぜビールだとたくさん飲めるのだろうか。ネットには「水は胃では吸収されないが、アルコールは胃でも吸収されるから」などとまことしやかに書かれているが、これは本当だろうか? 胃や腸などの消化器系のメカニズムに詳しい東海大学医学部 内科学系 消化器内科学教授の松嶋成志さんに話を聞いた。
アルコールは胃で吸収されるといっても、ビールのほとんどは水

最高気温が35度を超えることが珍しくなくなり、じっとしていても額に汗がにじむようになったこの頃…、こんな時はビールでしょ、ビール!
拭ってもなかなか引かない汗も、きんきんに冷たーく冷やしたビールをごくっと飲めば、体の中からすーっと冷えてくる。夏はやっぱりビールがおいしい。あまりにおいしすぎて、気づけば短時間で大ジョッキを3杯なんてこともざらである。
目の前並んだ空の大ジョッキを見て、いつも疑問に思うのは「どうしてビールはたくさん飲めるのに、水は飲めないのだろう」ということ。筆者の身長は152センチ(体重はナイショ)。この小さいカラダの中に大ジョッキ700mL×3杯=2.1Lがどう収まっているのかが不思議でならない。一方、“ただの水”になると途端に飲める量が減り、私の場合がんばって飲んでも1回300mLがせいぜいである。周りの男性に聞いても、「がんばっても1Lくらいかな」と話していた。
かねがね不思議に思っていたので、先日、ネットで検索してみた。すると、同じような疑問を持つ人は多いらしく、質問とその回答がいくつも見つかった。そこでは「水は胃では吸収されず、腸でしか吸収されない。一方でアルコールは胃でも吸収される。だからビールはたくさん飲める」とまことしやかに書かれている。これらの書き込みを見た私は、一瞬「なるほど!」と思って納得してしまった。
だが、これは本当だろうか? 落ち着いてよく考えてみると、ビールのアルコール分はたかだが5%程度だ。ビールを1L飲んだとして、仮にそのアルコール分がすべて胃で吸収されたとしても、たったの50mLでしかなく、残りの水分の大半は胃に残ってしまう。さらにアルコールは胃だけでなく、小腸でも吸収されるという。こうしたことを考えると、「アルコールは胃で吸収されるから、ビールはたくさん飲める」という理論は説明がつかなくなる。
そこで今回は、左党の多くが抱くこの疑問を解明すべく、胃や腸などの消化器系のメカニズムに詳しい東海大学医学部 内科学系 消化器内科学教授、内視鏡室長の松嶋成志さんに話をうかがった。