コロナ禍の精神不安でDVや離婚が急増
コロナ禍で酒量が増えたのは、家飲みが中心だっただけでなく、精神的な不安も原因だった。頭では飲み過ぎてはいけないと思っていても、不安をかき消すために酔って忘れようとしていた人もいるだろう。その気持ちは痛いほど分かるし、その不安はまだ続いている。
「前回もお伝えしましたが、酒量が増え、罪悪感を持って飲むようになると、アルコール依存症に陥る危険性が高くなります。もし今、少しでも罪悪感があるなら、それはアルコール依存症に近い状態にあると考えたほうがいい。コロナ禍では、先が見えない不安や閉塞感もあいまって、いつも以上にメンタルに負担がかかっています。多量飲酒を続けることで、不安障害、うつ、気分の落ち込みが表れやすいのです」(吉本さん)
また、今後もテレワークが推奨され、家にいる時間が長くなったことで、「家庭内の人間関係にも変化が表れている」と吉本さんは話す。
「メンタルが不安定なところに、家族が長い時間家にいることで、DVや離婚が増えていると聞いています。例えば、いつもならスルーできるオヤジギャグにイラッとしたり、ちょっとした言葉に反応してケンカになったり、ということがあるでしょう。熟年離婚といえば定年退職後の問題ですが、それがコロナによって前倒しになっているのかもしれません」(吉本さん)
実際、DVや離婚は世界規模で増えている。フランスにおいては、外出禁止令が出された3日後に、DV対策を打ち出している。日本でも、全国の「配偶者暴力相談支援センター」に寄せられたDVの相談は1万3272件(2020年4月)で、前年同月に比べて約3割増えた。また中国の陝西省西安市では、2020年3月2日に再開された市内の離婚手続きの窓口が、予約でいっぱいになったという。
飲酒で肺炎リスクが上昇!?
そして吉本さんは、アフター・コロナの酒との付き合い方について考えるうえで、とても重要なことを教えてくれた。
「実は、お酒を多く飲む人ほど肺炎にかかるリスクが高いという研究があるのです。それによると、1985年から2017年に発表された14の論文のデータを統合して分析したところ、1日当たりのアルコール摂取量が10~20g増えるごとに、市中肺炎(*1)のリスクが8%上がることが分かったそうです(BMJ Open. 2018; 8(8): e022344.)。飲酒量が増えると免疫力が下がり、肺炎にかかりやすくなると考えられます」(吉本さん)

- 次ページ
- 「ヒマ」があるから酒量が増える