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左党の一分

酒乱になる人、ならない人は何が違うのか?

酒乱の条件【前編】飲むと豹変する人を生む2つの要因とは

 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

真面目な人ほど酒乱になりやすい?

 しかし、酒乱は遺伝子だけで決まるのだろうか? 実はそうではない。もう一つの要因、その人が置かれている「環境」も影響するという。

 眞先さんは、「環境要因も複雑なので、『どういった環境に置かれると酒乱になりやすい』とは一概に言いにくいのですが、典型的な例として、“普段から自分を抑制している人”ほど酒乱になりやすいと考えられます。性格的に真面目な人、また職業上、抑制を強いられる人などです」と話す。「その人の置かれている精神状態、つまりストレスをどのくらい抱えているかが関係していきます。性格的に真面目にやらなければならないと思っている人ほど、ストレスを抱えやすく、酒乱になる危険性が高いといえます」(眞先さん)

 冒頭で、酒乱の人は大脳皮質がアルコールによって麻痺していると説明した。「いつもは脳の理性を司る部分が、喜怒哀楽などの人間の感情を作る部分を抑制しています。しかし、アルコールにより理性を司る部分が最初に麻痺するため、感情を制御できなくなるわけです。普段から自分を厳しく抑制している人は、アルコールによりタガが外れると、この傾向がより顕著に現れるようになると考えられます」(眞先さん)※アルコールの脳への影響については後編で詳しく解説します。

 実は、眞先さんも、学生の頃は話すことや人付き合いが苦手で、ストレスを抱きがちなタイプだったそうだ。そして眞先さんは前述した遺伝子タイプも完全に酒乱タイプに該当するという。つまり、遺伝的にも環境的にも酒乱タイプというわけだ。眞先さんはかつて、大学時代に行った高校の同窓会の翌朝、目覚めたら自分の知らない部屋で寝ていたこともあったという逸話も明かしてくれた。

 なんと! 眞先さんも酒乱の気があったとは! 思い切り親近感を抱いてしまうではないか。著書『酒乱になる人、ならない人』を出版されたのも、実はそうした経験があったことも関係しているという。

日本は酒に対して寛容! その文化が酒乱を増やしている?

 眞先さんの言う通り、普段おとなしく真面目な人ほど、多重人格者なのでは? と思うほど、豹変してしまう飲み方をする人が多いのは、私も実感するところだ。これはお酒に弱い日本人特有のことなのだろうか?

 「若い頃の僕を含め、日本人は酒乱が多いのではないかと私は考えています。前述したように、遺伝的な要因がある上に、日本特有の『無礼講』という文化が密接に結びついているのではないかと推測しています。常に抑制やストレスを強いられる日常を覆すような日を設定し、ストレス発散のツールとして酒を利用する。人前で酔っ払うことをマナー違反とする欧米に対し、日本は酔うこと、酒に対して寛容なんですね。そうした文化背景もまた、酒乱を増やす要因になっているのではないかと思います」(眞先さん)

 これはまさに納得。日本では酒乱も含めて、酒席での行動におおらかで、「酒を飲んでいたから…」という理由で許されていることが多いように思う。これも広義の意味での環境的要因といえそうだ。

 今でこそ、セクハラという言葉が定着し、酒席で女性にタッチするなど許されない時代になっているが、20、30年くらい前は、飲み会となると女性の胸やお尻を触りまくるような困ったやからがいたものだ。

 ある知人は、一度酒が入ると目が据わり、セクハラし放題&暴言吐き放題だった。彼は普段、蚊さえも殺さないようなおとなしい人で、上司から急に残業を強いられても絶対に「NO」と言わなかった。その後、風の噂で彼は定年となったと聞いたが、会社から解放され、環境が変わったことで酒乱的な飲み方はしなくなったのだろうか? 彼のその後は気になるところである。

       ◇          ◇          ◇

 どんな人が酒乱になりやすいのか――。数多くの酒乱と出会ってきた私としては、かねてよりの疑問だった。今回、眞先さんから話を聞いて、ようやく納得がいった。ADH、ALDHの組み合わせという遺伝的要素、そしてその人が置かれている環境。これら2つの要因が複雑に絡むことで、酒乱は形成されるわけだ。

 ここまでの酒乱の条件はある程度分かったが、酒乱が発生する仕組みももう少し知りたいところだ。アルコールが脳に影響を与えることは分かったが、実際には脳内で何が起こっているのだろうか。また、飲み過ぎると、そのときの記憶がスッポリ抜ける現象(ブラックアウト)が起こることがある。これも酒乱と関係あるのだろうか。来月公開の後編では、眞先さんに引き続き話を聞いていこう。

眞先 敏弘 (まさき としひろ)さん
帝京科学大学 医療科学部 医学教育センター教授
眞先 敏弘 (まさき としひろ)さん 1985年東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部神経内科、国立精神・神経センター神経研究所、虎の門病院、防衛医科大学校などを経て、2000年、国立療養所久里浜病院 神経内科医長。ロックフェラー大学細菌病態・免疫学教室Research Associate、エディンバラ大学神経再生センターSenior Postdoctoral Fellowを経て現職。
酒好き医師が教える再考の飲み方

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