白ワインでは大丈夫なのに、赤ワインだと悪酔いすることが…

白ワインの健康効果をひと通り理解したところで、最後に、「白ワインだと悪酔いしないのに、赤ワインだと悪酔いすることがある」のはなぜか――かねがね思っていた疑問を佐藤さんにぶつけてみた。
冒頭でも触れたが、私の場合、赤ワインを飲むと、翌日に残ったり、ひどい頭痛になることが多いのだ。私の周囲にも少ないながら、筆者と同じような症状を持つ人がいる。
先生、赤ワインを飲んで、頭痛がしたり、具合が悪くなるなんてことは、実際にあるのでしょうか?
「はい、ごく少数ですが、そういう方もいます。その原因は赤ワインの発酵プロセスで乳酸菌が生成するアミン類(*3)の一種であることが分かっています。赤ワインに限らず、漬物やチーズなど同じく乳酸菌を使って発酵する食品にはアミン類が含まれています。体内でアミン類を分解するには、特定の酵素が必要になるのですが、その酵素の活性レベルが低い方がいて、その場合、頭痛などを引き起こすのです。アミン類はフルボディの濃い赤ワインに特に多く含まれる一方で、多くの白ワインにはほとんど含まれていません」(佐藤さん)
なるほど、まさに私はこの酵素活性が低いのであろう。赤ワインとチーズのペアリングは向いていないのかも(号泣)。しかし物は考えよう。赤ワインで悪酔いし、懲りてしまった人でも、アミン類がほぼ含まれていない白ワインなら安心ということになる。
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これまでの佐藤さんの話を伺って、白ワインにも確固たる健康効果があることを知り、白ワイン&スパークリング派としては大満足である。そしてまた赤ワインだと悪酔いしてしまう原因も明確になり、心底スッキリした。ワインが低糖質というのも万年ダイエッターにとっては非常にうれしい情報である。もちろん飲み過ぎには注意し、適量(純アルコールにして20g、グラスワイン2杯程度)を守らなくてはいけないのだろうけど…。
ちなみに、白ワインは一般的に赤ワインよりアルコール度数が低いものが多い。「白ワインはアルコール度数が高いもので12%程度で、ドイツのリースリングなどは9%程度です。一方、赤ワインは、特にアメリカなどのニューワールドのワインでは15%を超えるものも増えています」(佐藤さん)。これは、温暖化の影響などによりブドウの糖度が上がっていることが影響しているのだという。
9%と15%とは、かなりの違いだ。同じ量のワインを飲むなら、白ワインの方がアルコール量が少なくなるということ。逆に言えば、同じアルコール量に抑えたいなら、白ワインの方が多く飲んでもOKということでもある。ささやかながらうれしい話だ。
実は取材帰りに佐藤さんお勧めのアルザスワインをしかと買ってしまった。これからはますます白ワインとスパークリングに傾倒してしまいそうだ。
(図版:増田真一)
山梨大学ワイン科学研究センター・客員教授
