赤と白の造り方の違いがポリフェノールの量に影響していた
具体的な健康効果に入る前に、まずは白ワインの原料や製造法について確認しておこう。先生、赤ワインと白ワインの製法の違いについてご教示ください。
「赤ワインの原料は黒ブドウ、白ワインの原料は白ブドウです。白ワインの原料になる主な品種には、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、甲州などがあります。ワインは、ブドウを酵母によりアルコール発酵させてできたお酒ですが、実は赤ワインと白ワインでは、原料だけでなく、製造方法が異なるのです。これがポリフェノールの量などに関係します(*1)」と佐藤さんは話す。
具体的には、「赤ワインはブドウの実、果皮、種も一緒に仕込み、発酵させるのに対し、白ワインは収穫したブドウを破砕した後、圧搾機で搾ったブドウ果汁を発酵させます。ブドウのポリフェノールは主に果皮や種に多く含まれています。果皮に3割程度、種に7割程度で、果汁に少量含まれますが少ないのです。白ワインに比べ、赤ワインにポリフェノールが多いのは、果皮も種も使って仕込むからです」(佐藤さん)
なるほど、ポリフェノールの量に違いが出るのは製造方法の違いによるものだったわけだ。ポリフェノールとは、植物が光合成によって生成する色素や苦味の成分。活性酸素を撃退する抗酸化物質として、健康効果が知られている。
「ワインの健康効果の中核的な存在がポリフェノールです。ポリフェノールはお茶やチョコレートをはじめ、さまざまな食品に含まれていますが、圧倒的に赤ワインの含有量が多く、緑茶の数倍程度含まれています」と佐藤さんは話す。
実際、佐藤さんはさまざまなワインのポリフェノールの含有量を計測している。そのデータによると、白ワインに含まれるポリフェノールは300~700ppm程度で、赤ワインの半分から数分の1程度なのだという。

白ワインはポリフェノールが少なめだが、性能がいい!
白ワイン派としては悲しいことだが、健康効果の面ではやはり赤ワインに軍配が上がってしまいそうだ。落胆する私に、佐藤さんはこうフォローしてくれた。
「確かに白ワインのポリフェノールは、赤ワインに比べ、量は少ないです。しかし量は少なくても、その性能は赤ワインに勝る部分があります。それはカラダに吸収されやすいということ。白ワインに含まれるポリフェノールは、赤ワインのポリフェノールに比べて分子が小さく、そのためカラダに吸収されやすいのです。つまり、量は少ないけれど性能がいいのです」(佐藤さん)。なお、佐藤さんによると、日本の甲州種という品種はポリフェノールの含有量が多く、健康効果が期待されているのだという。
白ワインのポリフェノールがカラダに吸収されやすいとは朗報である。甲州種とは日本固有のワイン用のブドウで、800年の歴史を持つ。昨今では甲州種を使った日本ワインが国際ワインコンクールで入賞するなど注目を集めている。これは期待大ではないか。
では「カラダに吸収されやすい」という白ワインのポリフェノールの効果を、最も効果的に得る方法はないのだろうか?
「それは食事の最初に飲むことです。最初に白ワインを飲むと、早くからその抗酸化作用などを得ることができます。一般に、フレンチやイタリアンでは、前菜と一緒に白ワインを飲み、赤ワインは食事の後半で飲みますよね。あれは実に理にかなった飲み方なんです」(佐藤さん)
前菜で出るものは、魚介類も多く、こってりした味付けのものは少ないから、白ワインのほうが食べ合わせがいいとは思っていた。だが、それだけでなく、健康効果の面からも推奨できるものだったとは!「昔から行われてきたことで、今もなお残っていることはきちんと意味があるんですよ」と佐藤さんは笑う。先人たちが残してくれた素晴らしいペアリング、しかと我が身で体感するとしよう。
また、ポリフェノールの含有量について、白ワインは赤ワインと比べれば少ないものの、他の酒と比べると多いのだという。「白ワインは赤ワインよりポリフェノールが少ないのは確かですが、それはあくまで赤ワインと比較したときの話です。日本酒にはポリフェノールはほとんど含まれていませんし、ビールも少量です。それらに比べれば白ワインのポリフェノールは断然多いといえます」と佐藤さん。
