減酒をサポートしてくれる薬「セリンクロ」
今年3月に発売になった減酒薬というのが、大塚製薬の「セリンクロ(一般名ナルメフェン)」だ(※日経新聞の記事はこちら)。私は今年1月にニュースで目にして以来、ずっと詳細を知りたいと思っていた。
薬の説明によると、飲酒前に服用することで、脳内のオピオイド(*3)受容体の作用を調整し、飲酒欲求を低下させることにより飲酒量を低減すると考えられるのだという。…と言われても、私には理解不能である。樋口先生、この薬はいったいどういうものなのでしょうか?
「セリンクロは飲酒欲求を抑制する薬です。これを飲酒する1~2時間前に飲んでおくと、赤ちょうちんやネオンといった飲酒欲求のトリガーとなるものを見ても『飲みたい』という衝動が湧きにくくなります。そして、酔うことで気持ちいいと思う気持ちを抑えると同時に、酔いにより生じる自己卑下などのネガティブな気持ちも抑える効果があると考えられます。つまり、アルコールによって得られる効果が低くなり、飲んでも通常とあまり変わらなくなるのです」(樋口さん)
なるほど、わざわざお金をかけて酒を飲むのに、いつも以上に楽しい気分になったりしないのなら、酒を飲まなくてもいいと思うわけだ。なお、セリンクロの作用がなぜ飲酒量低減につながるかについては、まだよく分かっていないのだという。
では実際、セリンクロの減酒の効果はどうなのだろう?
アルコール依存症患者677人を対象に、プラセボ(偽薬)とセリンクロ10mg、セリンクロ20mgを服用してもらった検証の結果、セリンクロ10mg、セリンクロ20mgともに減酒の効果が確認できたという。その結果が下のグラフだ。
「セリンクロを服用したグループでは、アルコール消費量で男性なら60g、女性なら40gを超えた日(多量飲酒日)が減少するとともに、飲酒量も減少することが確認されました」(樋口さん)
処方の対象となるのは「アルコール依存症」
これを聞いて、自分はアルコール依存症かも…と心配している人なら、「試してみたい!」と思った人もいるのではないだろうか?
しかし、残念ながら、現時点においてセリンクロは、身近にある病院などで手軽に処方してもらえるものではないのだという。
まず、このセリンクロの処方の対象となるのは「アルコール依存症」の人となる。アルコール依存症と診断されていない人は対象外、つまり、依存症にはなっていないが、飲み過ぎによるトラブルや健康への影響を懸念して減酒したいという人には処方できない。
