酒量を減らしたほうがいいのは分かっているけど、なかなか減らせない――。これは多くの左党が持つ悩みだろう。アルコール依存症と診断された人はもちろん、そうでない人も、お酒のトラブルを未然に防ぐため、健康維持のために検討したい「減酒」。最近は減酒をサポートする減酒外来を始めた病院が登場したほか、今年3月には「減酒」をサポートする新薬が登場するなど、減酒をとりまく状況が大きく変わってきた。今回は、久里浜医療センター院長の樋口進さんに新薬について話を聞いた。

前回は、アルコール依存症治療の現状についてお伝えした。かつては、「依存症の治療は断酒のみ」だったものが、近年、飲酒量を減らす「減酒」という選択肢が広がってきた(*1)。2017年には久里浜医療センター(*2)で「減酒外来」が始まっているし、まだ多くはないが、他でも減酒外来を設ける病院が出てきている。
「断酒でなくてはダメ」と言われてしまうとハードルが高くなるが、「減酒でもいい」「まずは減酒から始めてみては?」と言われれば、「ちょっと検討してみようかな?」と思う左党も少なくないのではないだろうか。
前回も少し書いたが、私の知人は、「アルコール依存症の専門病院は怖くて受診できない」と話していた。なぜなら「『断酒』を勧められると思っている」からだ。私からすると彼の場合は多量飲酒であるものの、ギリギリ仕事に大きな支障が出るまでではないように見える。とはいえ、病院で診断を受ければ、「アルコール依存症」と診断される可能性は高いし(本人はそれを心配している)、彼自身の健康のためには断酒が望ましいのではないかと思う。しかし、酒販店勤務ということもあり、仕事上完全に絶つことは難しい。そんなときに減酒という選択肢はとてもいいと思う。
飲む量を減らす減酒は、依存症レベルの人はもちろん、酒乱やブラックアウトなどの酒に関わるトラブルが不安な人、そして酒量が多くて肝機能の数値が悪い人などなら、ぜひとも実行してほしいこと。しかし、自分の意思だけではなかなか抑えられないという思いは、多くの左党が抱える悩みであろう。そんなときに、減酒外来を活用するというのは検討に値することだ。
さらに、今年3月には減酒をサポートしてくれるという新薬が登場した。減酒外来を設ける病院に加えて、減酒をサポートする薬も登場したわけだから、本気で減酒に取り組みたい人にとっては間違いなくいい環境になってきたといえるだろう。
今回は前回に続き、アルコール問題のエキスパートである久里浜医療センター院長の樋口進さんに、新薬について話を聞いていく。飲酒量を減らすというが、どんなメカニズムで作用するのか、そしてその効果は? またどんな人が利用できる薬なのだろうか。
*2 アルコール依存症をはじめとした各種依存症の専門治療を中心とした病院(独立行政法人国立病院機構に所属)。1963年に日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設立、アルコール問題に関わる医療で日本をリードする病院。2012年に、名称を「久里浜アルコール症センター」から現在の「久里浜医療センター」に変更。
