「前回も説明したように、胃酸の逆流が起きるのは、胃と食道の間でバルブのような働きをする食道括約筋が緩んでしまうから。お酒好きの方には耳が痛いと思いますが、アルコールそのものに下部食道括約筋を弛緩させる作用があると言われているので、飲み過ぎは厳禁です。特に胃を膨らませる炭酸ガスを含んだビール、シャンパーニュ、そして柑橘類 + 炭酸 + アルコールというトリプルの組み合わせであるサワー系のお酒も控えたほうが無難です。白ワインなど酸っぱいお酒も良くないと言われています」(秋山さん)
喉がカラカラの時にシュワッとした刺激がたまらない炭酸系がNGとは、酒好きにとっては大きな痛手。酒量にも気をつけるとともに、おつまみの選び方にも注意しなくてはならないという。
「胃酸逆流の大きな原因となる食べ過ぎは厳禁。腹八分を心がけましょう。食事の内容も問題で、特に脂肪分の多い食事は胃もたれを助長します。唐辛子など刺激の強い香辛料、柑橘類、コーヒー、チョコレート、スイーツも胸やけを起こしやすいと言われています。また早食いは食べる際に空気も一緒に飲み込みやすく、それによって胃が膨らんでげっぷが出やすくなるので、時間をかけて食べるようにしましょう。げっぷが出ると逆流を助長するからです」(秋山さん)
脂肪分が多い揚げ物は、酒の良き友。焼酎ハイボールに合う豚の角煮、レモンサワーが恋しくなるホルモン、日本酒に合う脂のりのりのウナギも良くないなんて(涙)。
「過食、早食い、脂肪分の多い食事をしていると、肥満につながります。太るとお腹回りに脂肪がつき、胃を圧迫するため、逆流が起こりやすくなるという負のスパイラルに陥るので注意が必要です」(秋山さん)
次々に耳が痛いアドバイスが飛んでくるが、前回も述べたように、飲んですぐに横になるのも、逆流の原因になるので避けたほうがよい。
脂肪分の少ない食事にすると胃もスッキリ
「他にも喫煙や、胃を圧迫する前かがみの姿勢、ベルトやコルセットでお腹を強く締め付けることなども気をつけたい点です。逆流性食道炎は、投薬や生活面の改善で症状が緩和しても、再発しやすいと言われています。胃もたれや胸やけが良くなったからと気を緩めず、継続的に飲み過ぎ、食べ過ぎに注意するよう心がけましょう」(秋山さん)
自分には無関係と思っていた逆流性食道炎と診断され、初めて気づいた健康のありがたさ。
個人的には、レモンサワーやチョコレートなどを完全にやめることは難しいけれども、取材後、肉の代わりに白身の魚や脂肪の少ない鶏胸肉、豆腐や蒸し野菜をメインにする食生活に切り替えたところ、確かに翌朝の胃のすっきり感が全然違う。いかに胃や食道に負担をかけていたかがよく分かった。
想像以上に多くいると思われる酒好きの逆流性食道炎持ちの皆さん(予備軍の方も)、ながーく酒とつきあうためにも今一度、酒量と酒の種類、おつまみを見直ししてみてはいかがだろうか?
(図版制作:増田真一)
